これまで楽天グループがインターネット通販サイト「楽天市場」で進めてきた送料無料化の取り組みに対し、公正取引委員会が独禁法違反の可能性を指摘した。楽天が今後改善策を取ることで公取委の審査は終了する方向だが、出店者とプラットフォーマーである楽天に圧倒的な力の差がある構図は変わらない。今回の問題は需要が急拡大する中で顕在化したネット通販のひずみともいえ、立場の弱い事業者にプラットフォーマーの競争のつけを回さない保護策が求められそうだ。
「早く改善措置が取られていれば、ここまで(審査に)時間がかかることはなかった」
公取委の担当者は6日の記者説明会でこう話した。
楽天の送料無料化は三木谷浩史会長兼社長が平成31年1月に表明。楽天では出店者ごとに送料を設定しており、「送料が分かりにくい」と批判されていたことが背景にある。たびたび強引な手法が問題になったものの、ライバルとの競争のために一貫して導入を推し進め、問題が長期化。公取委は約2年間審査を続けてきた。
一方、公取委は「楽天に順法意識がないと判断するのは違う」とも指摘した。ただ、悪意がなかろうがプラットフォーマーに出店者側が左右される現状があるのは確かで、楽天の送料無料制度に参加した出店者は9割超に上っている。
背景にあるのが、電子商取引市場の急成長だ。新型コロナウイルス下の巣ごもり需要もあり、競争が激化するあおりを中小の出店者が受けている格好だ。
楽天のライバル、米アマゾン・コムは巨大な倉庫を建設し、自社で物流網を抱えることで会員の送料を無料化し、非会員も2千円以上の買い物で送料が無料になる。楽天はアマゾンへの対抗で日本郵便との提携を進めるが、効果はまだ見えない。こうしたしわ寄せが出店者に及んでいるともいえ、楽天市場の一部出店者らでつくる任意団体「楽天ユニオン」の勝又勇輝代表は「公取委の判断は評価できるが、力の強いプラットフォーマーのルール変更には今後も注意が必要だ」と話す。(高木克聡)