<独自>朝鮮学校補助金 下げ止まり 令和2年度2・1億円 見直し機運低下

全国に63校(うち5校休校)ある朝鮮学校に自治体が支出した令和2年度の補助金総額は計2億1055万円で、前年度に比べて699万円の微減にとどまったことが6日、文部科学省の内部資料で判明した。平成22年に導入された国による高校授業料無償化の適用をめぐり、運営実態の不透明さが指摘されるなどしたことで、自治体側でも補助金支出を見直す動きが広がったが、ここ数年は補助金総額が下げ止まりつつある。

朝鮮学校は学校教育法で「学校」と認定されておらず、都道府県が「各種学校」として認可。自治体ごとに独自の制度を設けて補助金を支出してきた。自治体からの補助金は、運営費などとして学校に直接提供される場合と、保護者支援の名目で家庭に提供される場合があり、地域によって運用が異なる。

文科省の内部資料によると、令和2年度に管内の朝鮮学校や通学する子供がいる家庭に補助金を支出していた自治体は、11道府県7935万円(前年度比29万円増)、92市区町1億3120万円(同728万円減)。道府県数、市区町数とも前年度と変わらなかった。

文科省による集計では、全国の自治体が平成21年度に支出した補助金は、計約8億4千万円(27都道府県148市区町村)。このころに比べれば、補助金総額は4分の1程度まで減ったが、ここ数年は数百万円程度の減額で推移しており、機運の低下が懸念される。

朝鮮学校をめぐっては、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)による教育基本法が禁じた「不当な支配」の疑いが指摘されている。高校授業料無償化を朝鮮学校にも適用するかどうかが議論になり、22年度以降、当時の石原慎太郎東京都知事と橋下徹大阪府知事が支出停止に踏み切った。25年には国が無償化の対象外とし、文科省が28年に公益性の観点などから支出の妥当性を検討するよう通知を出したこともあり、同年度には3億円を割り込んだ。

朝鮮学校側は無償化の対象から除外したことを違法だとして全国5カ所の地裁・支部で訴訟を起こしたが、今年の夏までにいずれも国側勝訴の判決が確定している。


総連の「不当支配」疑念


朝鮮学校への自治体による補助金支出がここ数年、ほとんど減少せずに横ばいで推移していることが文部科学省の内部資料で判明した。背景には、平成28年に文科省が制度の妥当性を再検討するよう促したにもかかわらず、いまだに多くの自治体が温存させていることがある。北朝鮮の強い影響下にある在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)による朝鮮学校の「不当な支配」への疑念が続く中での支援に識者からは疑問の声が上がる。

令和2年度に支出実績があった11道府県92市区町のうち支出が最も多かったのは兵庫県の5192万円。学校運営費補助がその名目となっている。さらに同県内では10市で計1966万円の補助金を支出。県全体で7千万円以上となり、補助金総額の3分の1を占める。

平成30年度、令和元年度と連続で支出ゼロだった岡山県は2年度、1校に20万円を補助した。同県では、私立の各種学校に備品購入費として1校あたり年間20万~100万円を補助しており、朝鮮学校も3年ぶりにこの制度を活用した。

県総務学事課は「朝鮮学校を対象にするかしないかの議論はあると思うが、相手国との関係性も考慮して補助の正当性を検討している」としている。

一方、元年度に67万円だった福岡県の2年度の支出はゼロ。同県では朝鮮学校が行う日本の学校や地域との交流イベントなどへの補助を続けているが、2年度は新型コロナウイルス禍の影響で開催できなかったため、補助もゼロになった。県私学振興課によると、3年度に入り朝鮮学校側からイベント開催に伴う申請があった。長引くコロナ禍で開催されるかは不透明だが、開催された場合には、申請内容に即して支出する方向だという。

このほか多くの自治体で保護者支援として家庭に補助金が提供されている。ただ過去には、補助金が支給された家庭の保護者が「寄付」名目で朝鮮学校側に納付させられたケースがあり、朝鮮総連関係者の関与が指摘されている。コロナ禍により財務状況悪化に直面している朝鮮総連と朝鮮学校の今後の動向を、公安関係者は注視している。

拉致被害者の支援組織「救う会」会長の西岡力・麗澤大学客員教授は「(北朝鮮による)拉致問題が解決に向かわない中で、各自治体の制度が変わっていない実態が判明し、非常に残念だ」と指摘。各自治体が改めて朝鮮学校の実態を調査する必要性があるとし「支援が正当なのか検討すべきだ」と話した。(大泉晋之助)


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