変異株「最悪想定し対応」 改憲へ世論喚起 所信表明

臨時国会の衆院本会議で所信表明演説を行う岸田文雄首相=6日午後、衆院本会議場(矢島康弘撮影)
臨時国会の衆院本会議で所信表明演説を行う岸田文雄首相=6日午後、衆院本会議場(矢島康弘撮影)

第207回臨時国会が6日召集され、岸田文雄首相が衆院本会議で所信表明演説を行った。新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大に備え、「最悪の事態を想定」して細心かつ慎重に対応する考えを強調し、3回目のワクチン接種を前倒しする方針を示した。外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」をおおむね1年をかけて改定すると表明するほか、憲法改正に向けた世論の喚起も訴えた。

首相は、オミクロン株について「多くの国でも確認されるなどのリスクも生じている」と指摘。ワクチンの効果などを見極めたうえで、米モデルナ製ワクチンを活用して、3回目接種を「8カ月を待たずにできる限り前倒しする」と述べた。合わせて、マイナンバーカードを使い、スマートフォンでワクチン接種証明書発行を20日から始めることも明らかにした。

また、コロナ危機の先に成長と分配を実現する「新しい資本主義」を目指す考えを強調し、クリーンエネルギー戦略の策定や、半導体国内立地推進のための法案の今国会提出などを掲げた。同時に、給与を引き上げた企業を支援する税制を抜本的に強化し、「企業の税額控除率を大胆に引き上げる」と訴えた。

安全保障については「いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、防衛力を抜本的に強化する」と主張。来年末を念頭に国家安保戦略と防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画(中期防)をおおむね1年かけて策定するとした。

対中国外交に関しては「主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ共通の課題には協力し、建設的かつ安定的な関係の構築を目指す」と表明。国民に丁寧な説明を行い、「国民とともにある外交・安全保障」を進める考えを示した。

憲法改正に向けて、「国会議員には憲法の在り方に真剣に向き合う責務がある」と訴えて国会での議論に期待を示した。同時に「国民理解の更なる深化が大事だ」として、「国会議員が広く国民の議論を喚起していこう」と呼び掛けた。

演説の文字数は約8900字で、就任直後の10月の前回演説から1900字以上増え、自民党が政権を奪還した平成24年12月以降では最多となった。

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