産経抄

12月5日

昔の人は、水の中を「異界」と恐れた。釣りにまつわる怪談が多いのは、水面に釣り糸を垂れることで、この世とあの世がふとした拍子につながるからだという(長辻象平著『江戸釣百物語』、河出書房新社)。

 ▼その一つ。釣り舟の船頭・清次は客のない日に舟を出し、上々の釣果を挙げた。岸に戻ると、異相の大男が食わせろとすごんでくる。1尾差し出した清次に、大男は「俺は疫神(やくがみ)だ。家の戸口にお前の名を書いた札を出しておけば立ち寄らぬ」と言って消えたという。

 ▼「釣舟清次」に厄除(よ)けの冥加あり。噂は広まり、風邪がはやると庶民は札に「釣舟清次」と書いて戸口に貼った。江戸中期の話である。新型コロナウイルス封じの護符として、海の妖怪アマビエが話題を集めたのも記憶に新しい。厄除けと水の関わりは深いらしい。

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