カーボンネガティブなコンクリートをつくる:世界で進む「脱炭素化」の試み

CO2をコンクリートに閉じ込める

CO2で硬化するコンクリートの生産量を増やそうとしている企業はほかにもある。ニュージャージー州を拠点とするセメント技術企業のSolidia Technologiesだ。同社はセメントに使用する石灰の量を減らし、天然や合成のケイ灰石を含む粘土を増やすことにより、焼成温度を下げることに成功している。

Solidiaによると、この方法で燃料の消費量とCO2排出量をそれぞれ30%削減できるという。また同社は、硬化の工程で使用したCO2をそのまま完成品であるコンクリートに封じ込める技術も保有している。

硬化にCO2を使うことは、水の節約にもつながるだろう。「ごく一般的な『ポルトランドセメント』と呼ばれる種類のセメントでコンクリートをつくる際に費やされる水の量は、年間で約2.6兆リットルにもなります」と、SolidiaのCEOのブライアン・カルブフライシュは説明する。ポルトランドセメントは建築の分野で最も広く使われているセメントだ。

「当社の技術によって、各クライアント企業は硬化工程で使用する水の量を90%以上も減らせました。これによって、水不足の危機に直面している国々の問題を解消し、水資源を飲用や農業に使えるようにできればと考えています」

現在、Solidaは工業用ガス会社からCO2を調達している。しかし、同社は早い時期に各産業施設を含むほかの供給源からCO2を回収したいと考えており、最終的には大気中から直接CO2を取り込む「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」方式を採用する予定だ。「0.4ギガトンのCO2を回収できるようになる見込みです」と、カルブフライシュは言う。

Solidaはこれまでに総面積で92,000平方メートルを超える舗装道路用のコンクリートタイルを販売してきたが、いまのターゲットは「生コンクリート」市場だ。工場で混ぜ合わせたコンクリートをミキサー車で建設現場に運んで使う生コンクリートは、世界市場の約75%を占めている。

Solidaは、現場で水を加えて使う「プレミックス」方式のセメントを間もなく発売予定で、現在は業界各団体からの認可を待っているところだ。「国際認証機関である米国材料試験協会(ASTM)やほかの各政府機関の認可が得られれば、すぐにでも膨大な市場シェアを獲得できるはずです」と、カルブフライシュは意気込む。

世界中で通用する解決策はない

一方、ブラッドフォード大学のアシャウアらのチームは、熱も水も使わないまったく別の方法を探っている。彼らが研究する「ジオポリマーコンクリート」と呼ばれる素材は、アルミノシリケートを豊富に含む素材をアルカリ溶液と反応させることによって、コンクリートのように固いポリマーとなったものだ。

「ジオポリマーの生成には、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムなどのアルカリ活性剤のほかに、(物質が生成される反応が起きる前の段階にある)前駆体が必要になります」と、アシャウアは説明する。「この前駆体には、建築や解体の現場で発生する廃棄物を活用したいと考えています」

こうした廃棄物は英国だけで毎年6,600万トンも発生している。これらを使って建築資材を製造できれば、原料となる物質の採掘需要を減らせるようになり、結果的に環境汚染も防げるはずだ。とはいえ、ジオポリマーの普及にはまだまだ時間がかかる。また「苛性ソーダ」の別称で知られる水酸化ナトリウムのような刺激物を、活性剤として建築現場で用いるのも問題だろう。

しかし、アシャウアはもっと根本的なところでコンクリートの脱酸素化を考えている。建築のやり方そのものを変えてしまうのだ。現在、多くの建築家や建設会社がコンクリートに代わる素材の活用に取り組んでいる。木材や金属、ガラスといった素材をさらに設計に取り入れようとしているのだ。

アシャウアは、トルコにあるハジェテペ大学のムスタファ・サーマラン教授と共同で、レゴブロックに似たコンクリートブロックの製造に取り組んできた。レンガ型に成形されたこのコンクリートブロックは、セメントではなくカーボンファイバーや棒状の強化ポリマーで強度を保ち、ボルトで補強され、使い終わっても再利用できる。

「粉々に壊してしまうのではなく、建造物を解体して躯体部分を再び生かせるのです」と、アシャウアは説明する。「そうすることで原料を大幅に節約できます」 。アシャウアはいまもさまざまな方法でこの技術の普及に努め、業界のパートナー企業への説得を続けている。

コンクリートの問題を解決するには、世界に視野を広げる必要があるだろう。世界では、中国とインドの2カ国によるコンクリート生産量が全体の63%を占め、その一方で南半球に遍在する「グローバル・サウス」と呼ばれる発展途上国での需要も高まり続けている。

また、コンクリートは安価かつ地元産であることが求められる。コンクリートの大部分は実際にそれを使用する国で生産されているが、それは世界中で通用する絶対的な解決策が存在しないことも意味するのだ。

「CO2を回収する、さまざまな方法でセメントの使用量を減らす、当社の技術のようなテクノロジーを駆使するなど、あらゆる手段を講じる必要があるでしょう」と、Carbicreteのスターンは言う。「あまりに大量のコンクリートが生産されているので、解決策をひとつに絞れないのです」

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