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『認知症世界の歩き方』 当事者目線の「旅行記」に反響

『認知症世界の歩き方』
『認知症世界の歩き方』

『認知症世界の歩き方』筧裕介著(ライツ社・2090円)

認知症のある人は、どんな世界に生きているのだろうか。医療従事者や介護者の立場から解説した本は数多くあっても、「本人」視点で率直な気持ちや困りごとを語った本はほとんどなかった。本書は、認知症がある人が経験するさまざまな出来事を、「旅行記」としてまとめるというユニークな趣向。思わず手に取りたくなるポップな絵とわかりやすいデザインが特長だ。

発売2カ月余りで9刷9万部。手掛けたライツ社は、兵庫県明石市にある小さな出版社。大塚啓志郎社長はハイペースな売れ行きに驚きつつも、「コンセプトと内容が支持された」と手応えを語る。「当事者の視点にこだわり、約100人にインタビューを行いました。その声をベースに、有識者の知見とデザインの力を結集させた本。何より、認知症のある方に読んでほしい」

乗ると次第に記憶をなくす「ミステリーバス」、人の顔がわからなくなる「顔無し族の村」…。ちょっと怖いが、誰もが経験する可能性のある旅。体の機能低下など、考えられ得る理由を知れば、対処もしやすく勇気がわいてくる。認知症世界の住人だけでなく、一般ビジネスマンにも売れているそうだ。(黒沢綾子)