群馬県高崎市営のプロ専用レコーディングスタジオ「TAGO STUDIO TAKASAKI」が、ウイスキーの仕込みに使った木樽(きだる)を再利用したヘッドホンの販売を12月から始める。国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を意識し、持続可能な社会への取り組みとして立ち上げた「Historic Phone」シリーズの第1弾。音への飽くなき追求と、ウイスキー生産者の思いが詰まったヘッドホンは話題を呼びそうだ。
廃材利用で思い出に
同スタジオでは平成29年から同市内のヘッドホン製造メーカー「TOKUMI」とタイアップしてプロの音楽関係者からアマチュア音楽愛好家まで幅広い層に支持されるヘッドホンを提供している。
新シリーズは、スタジオの運営責任者で作曲家・音楽プロデューサーの多胡邦夫さん(48)が、同県みなかみ町の4中学校の統廃合で新たな校歌の作成を依頼され「子供たちへの思い出として(校舎の)木材の廃材を再利用してヘッドホンとして残してあげるのはどうかと思った」のがきっかけで誕生した。校舎は違う施設として活用されるなどしたため実現はしなかったが「世の中には色んな思いが詰まった廃材があることに気づかされた」という。
音のブレンド
第1弾のウイスキー樽は、埼玉県秩父市のベンチャーウイスキーが提供した約20年前に作られたホワイトオーク樽材を再利用する。同社は「イチローズモルト」のブランドを持ち、イギリスのウイスキー専門誌が主催するアワードで29年から5年連続で世界最高賞に輝くなど絶大な人気を誇っている。
同社の肥土(あくと)伊知郎社長は「多胡さんが製作しているヘッドホンで聴くと、音楽がひとつひとつの音のブレンドであると知った。ウイスキーも多彩な原酒をブレンドしてひとつの作品を作り上げている。ハイクオリティなヘッドホンで音のブレンドを感じていきたいと思い、今回の協力に至った」と話す。