モロッコ女性の貧困を伝統刺繍ブランド化で救う

モロッコ人の女性たちが刺繍を施した「DAR AMAL」のポーチ。1つ4840円(税込)で販売されている(蒲地里奈さん提供)
モロッコ人の女性たちが刺繍を施した「DAR AMAL」のポーチ。1つ4840円(税込)で販売されている(蒲地里奈さん提供)

北アフリカの国、モロッコに古くから伝わる伝統工芸「フェズ刺繡(ししゅう)」。刺繡作業を担う女性たちには仕事に見合った対価が支払われず、多くが貧困に苦しむ状況が続いていた。こうした女性を支援しようと、佐賀県出身で元青年海外協力隊員の蒲地(かもち)里奈さん(42)が、フェズ刺繡のブランドを立ち上げ、現金収入をもたらす仕組みを確立した。「伝統を長く継承していくためにも、支援を続けたい」と話している。

素材は小麦粉の袋

妹の田畑里佳さん(右)と店頭に立つ蒲地里奈さん=京都市
妹の田畑里佳さん(右)と店頭に立つ蒲地里奈さん=京都市

11月中旬、京都市下京区の百貨店「ジェイアール京都伊勢丹」4階。蒲地さんのブランド「DAR AMAL(ダール アマル)」の商品が並んでいた。規則的な幾何学模様が美しいバッグやポーチはすべてモロッコ人の女性たちによるものだ。

蒲地さんは1年の半分をモロッコで過ごし、残りの半分は日本各地のギャラリーなどで商品を販売。商品は人気で、ほぼ完売する。この日は大津市で別の会社を経営する妹の田畑里佳さん(40)とともに、店頭に立った。

「大容量で丈夫。デザインもかわいらしいですよね」。蒲地さんがこう言って手にとったバッグは幅約55センチ、縦約30センチとたっぷりサイズで、細部まで緻密に作り込まれている。

刺繡を縫いつけた素材は小麦粉の袋だが、表面は刺繡に覆われ、見た目にはわからない。パンが主食のモロッコで手に入りやすい小麦粉の袋を有効活用できないかと蒲地さんが考えついた。「布を買うのにも、お金がかかる。それに、女性は布を買いに気軽に外へ行くのも難しいので…」

土囊(どのう)袋のように目の粗い小麦粉の袋は、通常の布よりも作業がしやすいという利点もある。繊維の隙間を糸で埋めていくフェズ刺繡は目を酷使する繊細な作業で、視力が衰えて続けられなくなる女性もいる。蒲地さんは「伝統工芸に貢献してきた女性を切り捨てたくない。小麦粉の袋なら糸の目を取りやすく、視力が落ちても仕事を続けられる」と説明する。

〝搾取〟目の当たりにして

フェズ刺繡が伝わるのは古都フェズを中心としたモロッコ北部。「ダール アマル」の女性たちは聖都ムーレイイドリスにほど近い村々で日夜、作業に励んでいる。

フェズ刺繡はモロッコ国内で高い人気があり、外国人の土産物としても有名だ。しかし、「女性たちの多くは仕事に見合った収入が得られず、外から来た外商に〝搾取〟されている状況が続いていた」という。