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船の料理人「乗組員に元気届けたい」 海の安全食で支え

巡視艇内の調理場で乗組員の食事の調理をする上地希佳さん=第5管区海上保安本部提供
巡視艇内の調理場で乗組員の食事の調理をする上地希佳さん=第5管区海上保安本部提供

全国を11のブロックに分け、海の平和を日夜守る海上保安庁。巡視船艇で警備や救難活動にあたる乗組員にとって、長期任務で陸に戻れないことも多い。そんなとき、最大の楽しみといえるのが食事だ。入庁4年目の主計士、上地希佳(かみじきっか)さん(25)=第5管区海上保安本部(神戸市)=は食事の調理を担当する〝船の料理人〟。「乗組員の元気の源になる料理を届けて役立ちたい」と意気込んでいる。

巡視艇「あわぎり」をバックに敬礼する上地希佳さん=神戸市中央区(鈴木源也撮影)
巡視艇「あわぎり」をバックに敬礼する上地希佳さん=神戸市中央区(鈴木源也撮影)

主計士は料理のほかにも、船艇で庶務や物品管理などを担う縁の下の力持ち的存在だ。特に料理の腕が良く、レパートリーが多い主計士は人気が高く、異動時期ともなれば、自船の主計士が誰になるか話題に上ることも多いという。

上地さんによると、主計士の一日は夜明け前の海上で始まる。まだ薄暗い午前5時半ごろ、航海中の巡視艇「あわぎり」の船内に、魚を焼く香ばしい匂いが漂う。耳をすませば、包丁でまな板をたたく音が聞こえてくる。

用意された3つのコンロは引火を避けるため電気調理用が使われる。そこに家庭用の冷蔵庫が置かれた小さなスペースが上地さんの職場だ。天候によって船が揺れることもしばしば。中身がこぼれないように大鍋を使い、包丁は柄をしっかりと握ることを心掛ける。

同船の乗組員全員の食事を上地さんが1人で担う。眠い目をこすりながら乗務員が食堂に集まってきた。今日のメニューはごはんにみそ汁、焼き魚とだし巻き卵。業務を控えた乗組員が素早く食べられるように、あっさりとした和食にした。「ごはんは少し多めに炊いて、余った分はおにぎりにすると間食用に喜ばれるんです」と笑顔を見せる。

「安定している公務員になりたかった」という上地さんが選んだのが、海上保安官だった。海上保安学校(京都府舞鶴市)を卒業した後、保安官として警備・救難などの実務を学ぶうち「自分の料理で保安官を支えることができれば」と主計士の道を歩むことを決めた。

学生時代に飲食店のアルバイトで調理経験はあったが、当時と違い、現在は乗組員が活動するための1日分の栄養価をきちんと考える責務がある。幾度も調理実習を重ね、すばやく栄養を補給でき、かつ腹持ちのいいレシピを作り上げていった。

上地さんのレシピ帳には、教官から教わったという調理に必要な材料や調味料がぎっしりとメモされている。得意料理の「肉じゃが」はカレー風味を利かせた一品で、「家庭的で温かい」と大人気。献立に入れれば、おかわりが殺到するという。

服の汚れで乗組員の所属が分かるという海上保安官の世界。エンジンを管理する機関士の服の袖が油で汚れているように、上地さんの制服のおなか周辺も調理中についたシミが目立つようになってきた。

「船の中で何人分もの食事を作るのは大変ですが、食べ終わった後のお皿はいつもきれいで、『ごちそうさまでした』といわれると本当に報われる」と上地さん。今日も温かい料理を振る舞い、乗組員のおなかと心を満たす。(鈴木源也)