前理事長自宅改修で赤字、日大工事で補塡か 私物化が露呈

日本大学前理事長の田中英寿(ひでとし)容疑者(74)=所得税法違反容疑で逮捕=に3千万円を提供したとされる金沢市の建設業者が、日大工学部(福島県郡山市)キャンパスの修繕工事を受注した後、田中容疑者の自宅改修工事を低価格で行うよう日大元理事の井ノ口忠男被告(64)=背任罪で起訴=に要求されていたことが2日、関係者への取材で分かった。

関係者によると、建設業者側は自宅改修工事の赤字分を工学部の修繕工事で得た利益で補塡(ほてん)したとされる。東京地検特捜部は、田中容疑者が常態的に大学を私物化し、日大関連工事などを舞台に、自らに利益が出るよう図っていた疑いがあるとみて捜査している。

特捜部と東京国税局は同日、同法違反容疑で、田中容疑者の自宅(東京都杉並区)や日大本部(千代田区)、金沢市の建設業者など約20カ所を一斉に捜索した。田中容疑者宅の捜索は3回目で11月29日の田中容疑者の逮捕後は初めて。

関係者によると、金沢市の建設業者は昨年6月ごろ、日大工学部キャンパスの修繕工事を8億5千万円で日大側から受注した。同キャンパスは令和元年10月の台風で浸水などの被害を受けたという。

その後、業者は昨年7月ごろ、田中容疑者の自宅の改修工事について井ノ口被告から「3千万円でやれ」と指示を受け、3千万円の工事見積書を作成した。通常は1億円程度かかる工事だったが、業者は指示通りの額で請け負い、下請け業者への発注代などで大幅に赤字が発生したという。

この際、業者側は、工学部の修繕工事で受注額の2割程度が利益として見込まれるため、田中容疑者の自宅改修工事で発生する赤字分を補塡することにしたという。特捜部は社内の採算部門の検討過程を記した資料も押収したとみられる。

金沢市の建設業者をめぐっては、井ノ口被告が「日大の工事を受注できたのは俺のおかげだ」と述べ、昨年9月ごろ、3千万円を要求したという。特捜部は、同被告を介して田中容疑者に3千万円が渡ったとみて捜査。田中容疑者の自宅の改修工事が実質的に無償でされた可能性も浮上している。

関係者によると、金沢市の建設業者は特捜部の調べに対し、一連の工事について「不当な契約ではない」などと説明しているという。