大阪府東大阪市の中小企業「大原電線」が開発した「延長コード」が、今年のグッドデザイン賞で特に優秀と高い評価を得た「ベスト100」に選ばれた。工業デザイナーと共同開発し、黒一色で統一したシンプルなデザインが特徴だ。年明けからは量産化に乗りだし、来年4月にも市販を始める。
大原電線は昭和43年設立。50年以上にわたって電線を製造する社員わずか4人の小さな企業だ。大手家電メーカーなどの下請け企業にもなっているが、近年は海外の安い競合品に押されるなど厳しい経営環境に立たされている。
下請けからの脱却を目指して、同社が初めて自社製品の開発に乗りだしたのが延長コードだった。東大阪市が平成30年度から市内の中小企業を対象にした支援プロジェクトを活用。プロダクトデザイナーの鈴木元(げん)さんを紹介してもらい、共同開発した。
グッドデザイン賞は、国内企業などの優れたデザインの製品やサービスなどを表彰する歴史ある制度。今年は1608件が選ばれており、そのうち国内外で活躍する工業デザイナーらで構成する審査委員会が上位の「ベスト100」を選出している。
パナソニックやソニー、ホンダ、コクヨなどの大企業に肩を並べる受賞という快挙に、大原豊一(とよかず)社長は「何度も会社をやめようと考えたこともあったが、続けてきてよかった」と喜んだ。大原康行専務も「市が〝仲人〟をしてくれたおかげです」とプロジェクトに参加した成果を強調した。
ただ、受賞した延長コードはまだ試作品の段階。年明けにも金型でプラスチック成形を行う設備を導入する大型投資を行い、量産化を進めて来年4月にも販売を始める。製品は家庭でも店舗などの業務用でも使え、防塵(ぼうじん)機能でアウトドアでも使える。色は「黒だけでなく、グレー、緑、エンジの4色展開を考えたい」(康行専務)とし、価格は未定という。
報告を受けた野田義和市長は「メードイン東大阪の製品はそれほど多くなく、製品化が楽しみ。(同社の)後に続く企業も出てきてほしい」と期待した。