正門にかかる2つの大学名 キャンパス「同居」で生き残り 高野山大と大阪千代田短大

少子化で大学の経営環境が激変しているなか、異なる大学が同一キャンパスに〝同居〟する取り組みが始まっている。高野山大学(和歌山県高野町)が今年4月、文学部に教育学科を新設。開設先は大阪千代田短期大学(大阪府河内長野市)内だ。異なる学校法人の運営する大学が同じキャンパスを利用するのは珍しい。コスト削減や効率的な設備利用などメリットは大きいといい、新たなモデルとなる可能性もある。

体験を重視

緑豊かな自然に囲まれた河内長野市小山田地区。小高い山の上にある大阪千代田短大裏の山林で今春から、生い茂る木を切り倒し、遊歩道の整備に取り組む若者たちの姿がみられるようになった。高野山大文学部教育学科の学生たちだ。

地元のNPOの指導を受けながら、慣れない手つきでノコギリを使う。1年の村上遼さんは「初めての経験で戸惑うこともあるが、将来役立つと感じている」と話す。同学科の目玉となるカリキュラム、地域体験学習だ。

地域体験学習で森林整備をする高野山大の学生ら=6月、大阪府河内長野市
地域体験学習で森林整備をする高野山大の学生ら=6月、大阪府河内長野市

学習では、教員が間伐がもたらす恵みなどを説明。柳原高文特任准教授は「実際に経験していれば、理科の授業でも説得力ある教え方ができる」と話す。

その他にも農作業など4つの体験学習コースがある。同大は「里山に恵まれ、地域で活動するNPOもあった。特色を打ち出せている」と新キャンパスの手応えを話す。

コスト削減

高野山大にとって、教育学科の創設は8年越しの悲願だった。平成26年に教育学部の新設計画を発表。河内長野市内の小学校跡地での開校を目指したが、当初見込みより校舎改修などキャンパス整備に多額の費用がかかることが判明。また、本部のある和歌山県が県外設置に反対したこともあり計画は白紙になった。

その後に生まれたアイデアが大阪千代田短大との共有化。高野山大を運営する高野山学園と、大阪千代田短大を運営する千代田学園は弘法大師空海の思想を教育理念としていることや、同短大は幼稚園教諭免許の取得もできるなど教育分野での親和性もあった。

高野山に本部を置き、130年超の歴史をもつ高野山大。ピークの平成6年度には約1300人の学生がいたが、現在は約130人。高野山のキャンパスで仏教などを学ぶ文学部密教学科が柱だが、新学科は比較的交通の便がいい地で学生を集める狙いがあった。

キャンパス共有で一番大きいのはコスト面のメリットだ。当初の計画だった小学校跡地での開設では、校舎改修などで7億円のほか、設備・機材の整備などさらに費用がかかる。同居なら校舎の新設などは不要で、当初想定の半分以下で済んだという。

同短大にとっても恩恵は大きい。短大離れなどの逆風を受け、現在の学生数は約200人。ピーク(平成20年ごろ)の4割程度だ。500人の受け入れ規模があるキャンパスには、余裕があった。

設備面でも効率的な利用が期待できる。同短大は幼児教育科を柱としてきたため、幼稚園教諭免許、保育士資格取得に向けた実習に使う乳幼児保育実習室、音楽室などを備える。一方、小学校教諭免許取得のための実習で必要な理科室は、千代田学園が運営する近隣の大阪暁光高校の理科室を活用できる。

現在、両校の学生がともに受ける講義はないが、来年度からは、一般教養科目での共通カリキュラムを目指している。同短大から同大への編入も可能だ。

同短大の松浦善満学長は「短大を取り巻く環境は厳しい。高野山大との連携でカリキュラム、大学編入など学生の選択肢を増やせる」と期待する。

認知度課題

18歳人口は減少が続き、大学経営は厳しさを増す。リクルート進学総研の「マーケットリポート2021年3月号」によると、令和2年に116・7万人だった18歳人口は、14年には約12%減少する見込み。近畿は約2万9千人減と全国で最も減少数が大きくなる。

文部科学省によると、大学・短大などでは令和2年度までの5年間で46校が廃止され、うち31校は短大だった。

同居で新たなスタートを切った両校だが、滑り出しはやや厳しい。高野山大の教育学科の入学者は11人。定員(50人)に届かなかった。同大は「コロナ下で十分なPR活動ができなかった」とする。両校の施設やカリキュラムを活用できるなど、メリットとしている点の認知度向上も課題だ。

また、今後、学生数が大幅に増えた場合は、施設の収容能力の改善も含めた対応が迫られる。

キャンパス共有の動きは広がりをみせるか。大学経営コンサルタントの岩田雅明氏は「受験生・保護者には、間借りというイメージがプラスに伝わらない可能性はある」とする一方で「大学経営から見ると非常に合理的。将来的には可能性のあるモデル」と話す。(大島直之)

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