美村里江のミゴコロ

ハンサムなサケ

北海道の赤潮問題が心配である。定置網の中でサケが息絶えてしまい、エゾバフンウニなどもあわせ被害総額は約80億円にも上っているということだった。

それ以前から北海道のサケの漁獲量は減少傾向で、お隣ロシアとの漁業交渉の影響だけではないらしい。昨年の時点で5年前の半分以下という、衝撃的な数字だったのだ。

そんな貴重なサケが、一昨年の年末にドカンと1尾わが家に届いた。

送り主はFさん。北海道でサケを釣ろうという番組でお世話になり、人生初のルアー釣りに四苦八苦していた私にいろいろ教えてくださった。おかげさまで2度も針にかかるチャンスを得て、番組としてなんとか見どころを撮影できたのだ(サケを釣り上げられなかった要因は、巨体の逆走に合わせられなかった私の技術不足+パワー負け)。

お礼に私が愛用している釜たきの塩と京都のごまをお送りし、魚の研究をしている夫もご挨拶のメールを送信、養殖時の魚病の話などで盛り上がったらしい。そのお返しとしても破格と分かる大きな箱だったが、蓋を開けてさらにびっくり。

なんてきれいなんだ…。魚の造形美は知っているつもりだったが、それだけではない。ぴかぴか銀色の全身から「おいしいよ」という信号を放っていて、捕食者として一目ぼれという感じだった。

さて、このハンサムなサケを下ろさねばならない。一般的な魚は下ろせるが、規格外である。幸いシンクが横幅80センチと大きかったので、その中に寝てもらった。先にヒレをキッチンばさみで切って、と考えたがはさみが負けてしまう。笑えるほどに頑丈。包丁も骨に阻まれ、ノコギリのように押し引きしないと進まず、完璧に美しかったサケには申し訳ない、みっともない作業ぶりだった。

そんなヘロヘロの切り身でも、焼いたら絶品! ふっくらした身とあふれる脂はもちろん、特に感激するほどおいしかったのは「皮」。グルメな熊は、冬眠前にサケの皮だけ次々に食べて身を捨てることもあるらしい。そんなぜいたくな熊に、夫婦で何度も共感してしまう味のよさと充足感だった。

熊害(ゆうがい)の講演で上京することもあるというFさん。コロナ禍をまたいでしまったが、いらしたときにはぜひ、あのハンサムなおいしいサケのお礼をしたいと思っている。