「対話と協力」の人権外交は岐路に 外務省に担当官

外務省=東京都千代田区(鴨川一也撮影)
外務省=東京都千代田区(鴨川一也撮影)

「対話と協力」を基本方針とする日本の人権外交が岐路に立っている。中国による少数民族弾圧などを背景に米欧は人権擁護の態度を一層強め、日本をはじめとする友好国にも同等の姿勢を求めている。政府は国際人権問題担当の首相補佐官に続き、外務省にも人権担当官を新設する方針を決めたが、具体的な行動変容を伴わなければアリバイ作りに終わりかねない。

岸田文雄首相は9月の自民党総裁選で、香港や新疆(しんきょう)(しんきょう)ウイグル自治区での人権侵害に「毅然(きぜん)(きぜん)と対応する」と主張してきた。新たなポストの設置は、その意欲の表れといえる。

ただ、従来の方針を劇的に変える機運はない。首相補佐官に就任した中谷元氏は人権侵害に関わった他国の高官らに制裁を科す「人権侵害制裁法(日本版マグニツキー法)」の制定を訴えてきたが、政府高官は「検討する予定はない」と明言する。制裁の発動は、対話や経済支援などを含む協力によって相手国に人権状況の改善を促す日本の方針とは相いれないからだ。

外務省幹部は「中国に制裁を科して人権侵害がなくなるなら喜んで制裁するが、そうはならない。むしろ報復を呼んで結果的に国益を損ねる」と説明する。

とはいえ、先進7カ国(G7)で制裁法を持たないのは日本だけで、人権問題に後ろ向きな姿勢と映れば国際社会での存在感低下につながりかねない。自民党の佐藤正久元外務副大臣は「制裁を『できない』のと『しない』のでは全く違う。人権侵害に厳しく臨む姿勢を示すためにも法整備は進めるべきだ」と話す。

情報発信も課題となる。政府関係者は「中国に面と向かって人権問題を提起するのはアジアでは日本くらいだ」と語るが、米欧に比べて一拍遅く、表現も「懸念」などにとどまる。外務省には「人権問題で戦争になることはない。もっと思い切って批判すればいい」との声もある。

来年2月の北京冬季五輪に対し、米国や英国は「外交的ボイコット」を検討している。日本政府は態度を明らかにしていないが、近く判断を迫られる。人権問題への姿勢が問われる重大な局面となりそうだ。(石鍋圭)

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