通訳ガイドの全国組織設立 コロナでなりて減少

国家資格の全国通訳案内士ら通訳ガイド団体で構成する「日本通訳案内士団体連合会」が1日、東京都内で設立記者会見を開いた。資格試験の難化や認知度の低さに加え、長引く新型コロナウイルス禍による需要低迷などで通訳案内士が減少しているといい、全国組織を設立して関連施策の改善に関する政府への提言機能を強化したい考えだ。

報酬を得て通訳ガイド業務を行う全国通訳案内士は国家試験をパスし、高度な外国語能力と日本全国の歴史や文化などの観光知識を持つ。同連合会によると、実働人数は全国に1万8000人程度とみられ、うち連合会には7団体約2800人が参加。今後も加盟団体は増える見込みという。

全国通訳案内士をめぐる課題としては、試験問題の難化による合格率の低下や社会からの認知度不足などを指摘。平成30年からは急増する訪日外国人観光客への対処を理由に、無資格での通訳ガイド業務が可能となった上、コロナ禍の需要低迷により通訳案内士の廃業が進んだという。新規合格者数も28年は約2400人だったのが、昨年は489人にまで減った。

これまで通訳案内士団体は地域や扱う言語などで分かれて存在していたが、課題解決に向けた要望のとりまとめや政府などへの働きかけを強化するには、各組織の統合する必要があると判断。この日も国会議員や観光庁に対し、需要回復までの給付金支給やスキルを維持する学習機会確保の支援などを要望した。

来年3月ごろからは出入国制限の緩和を見込んで海外から一部でガイドの予約が入っていたが、新型コロナの新しい変異株「オミクロン株」の影響で全てキャンセルになったという。

同連合会の澄川雅弘会長は「政府は観光立国に向けた訪日外国人旅行者の目標『2030年に6000万人』とする旗を降ろしていないが、このままではそのときになって通訳案内士が誰もいなくなってしまう」と危機感をあらわにした。

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