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脱炭素最前線

④海洋施工に強い大林組 洋上風力で布石

秋田沖で1年の実証実験を経て、撤去される洋上風力発電の「スカートサクション」(大林組提供)
秋田沖で1年の実証実験を経て、撤去される洋上風力発電の「スカートサクション」(大林組提供)

秋田県全域で暴風雪警報が発令された2月中旬、秋田沖は50年に1度という高波に見舞われていた。ここには高さ33メートルに及ぶ洋上風力発電の基礎が海底に設置されていた。被害は出るのか。関係者は固唾をのんで見守ったが、基礎は暴風雪や高波に耐え、形状を変えることはなかった。

基礎を設置したのはゼネコン大手の大林組。1年間の実証を終え、今年6月に撤去したが、秋田沖にその痕跡は残っていない。この事実こそ大林組が持つ技術の強みを表している。

洋上風力は再生可能エネルギー拡大の切り札として期待されている。政府は再エネの電源構成を令和12年度に元年度の18%から36~38%に高める計画で、洋上風力は12年に1千万キロワット、22年に最大4500万キロワットの導入を目標に掲げる。

国は洋上風力の促進区域を指定し、発電事業者の公募を開始。事業者に選定されると、海域を30年間占有できる。6月に長崎県五島市沖の事業者が選定され、秋田沖や千葉沖など3海域でも公募が行われている。

洋上風力には海底に基礎を固定する「着床式」と、基礎を海に浮かべる「浮体式」がある。着床式は水深が浅い場所に、浮体式は深い場合に適している。

着床式は1本の鋼管を海底30~40メートルまで打ち込む「モノパイル」式が主流。製造コストが安く世界で約8割のシェアを占めるが、途中に固い岩盤があれば建設が阻害されるうえ、一度打ち込むと、すべてを撤去することは難しい。

一方、大林組が開発しているのは、着床式で「スカートサクション」と呼ばれる技術だ。湯飲み茶碗(ちゃわん)を逆さにしたような形状をした「スカート」と呼ばれる基礎を海底に複数設置して風車を支える。

海底10~15メートルの浅い打ち込みでよく、スカート内から排水して水圧を下げて海底に貫入。逆にスカート内に水を注入して水圧を上げれば撤去できる。「貫入と撤去ともに半日あれば済む」(土木本部生産技術本部設計第二部の伊藤政人担当部長)。基礎を完全に撤去できるため、30年間の占有期間終了後の完全撤去が公募条件になれば有利だ。

海外の洋上風力先進国と違い、日本の海岸線は遠浅が少なく、今後は浮体式の導入が不可欠だ。大林組も浮体をつなぎ留めるためのいかりにスカートサクションを使用する浮体式の開発を進めており、12年前後の実用化を目指している。

大林組は多くの海洋構造物の建設を手がけてきた。スカートサクションも21年前に開発した関西空港の埋め立て工事で使用した桟橋の基礎技術を転用した。スカートサクションを洋上風力の基礎に生かすのは、大林組のアイデアだ。伊藤氏は「海の施工実績が多いのが当社の強み。そうした経験を世界の脱炭素化に生かしたい」と力を込める。

再エネの適地が少ないとされる日本だが、海上風力は海に囲まれた日本の地形を生かすことができる。風車の生産は欧米企業が独占する状況にあるが、日本の海域での建設には国内ゼネコンの力が欠かせない。日本企業の技術を、いかに経済成長につなげるか。大林組のスカートサクションはその試金石となる。

山本裕一常務執行役員インタビュー 再エネで営業利益100億円目指す

インタビューに応じる大林組の山本裕一常務執行役員=東京都港区(黄金崎元撮影)
インタビューに応じる大林組の山本裕一常務執行役員=東京都港区(黄金崎元撮影)

脱炭素関連の事業について、大林組の山本裕一常務執行役員グリーンエネルギー本部長に話を聞いた。

――世界的に脱炭素化の動きが進んでいる。事業環境の変化はあるか

「工場の二酸化炭素(CO2)削減や自前の発電設備を持ちたいという相談が増えている。建設時にCO2排出量が少ない木造建築の依頼も多い」

――建設会社だが、再生可能エネルギー発電事業を積極的に展開している

「収益基盤の多様化に向けて、平成24年から発電事業に参入している。現在は太陽光や風力、バイオマスなど約30カ所が稼働している。再エネは建設業と親和性が高い。中長期的に再エネ全体で、営業利益100億円を目指したい」

――再エネを利用した「グリーン水素」の製造にも乗り出している

「7月に大分県九重町で地熱発電でグリーン水素を製造する実証設備が完成した。ニュージーランドでも大規模な水素製造設備を建設している。脱炭素社会を目指すには水素が大きな要素になる。運搬や製造で、当社の技術が生かせる場面は多い」

――グリーンエネルギー事業の課題は

「不確定要素が高いのがリスクだ。大きな投資が必要で、国の方針が変わると大変なことになる。安心して事業展開できる環境を作ってほしい」

――脱炭素社会における大林組の強みは

「数多くの大規模プロジェクトを手がけ、全体をマネジメントする力がある。地盤の調査や設計、調達、施工などのノウハウがある。再エネや水素の分野で貢献できることは多いと考えている」

やまもと・ゆういち 昭和55年東北大工卒、同年大林組入社。平成22年、東京本店建築事業部統括部長、27年執行役員本社テクノ事業創成本部副本部長、30年常務執行役員同本部長、令和3年常務執行役員グリーンエネルギー本部長兼PPP事業部担当。64歳。静岡県出身。

(黄金崎元)

=今後は随時掲載