既存ワクチンは効くのか メーカーの見解分かれ

スイスのジュネーブにあるWHO本部(共同)
スイスのジュネーブにあるWHO本部(共同)

新型コロナウイルスワクチンを米ファイザーと共同開発した独ビオンテックのサヒン最高経営責任者(CEO)は11月30日、既存ワクチンは新変異株「オミクロン株」感染に伴う重症化を防ぐ可能性が高く、新型ワクチンは「おそらく必要ない」と述べた。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が伝えた。

オミクロン株をめぐっては、米モデルナのバンセルCEOが、既存ワクチンの有効性は大きく下がるとの見方を示していた。主要ワクチンメーカーの間で見解が分かれた形だ。

世界保健機関(WHO)のスワミナサン首席科学者は30日、英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)に「結論を出すのは時期尚早だ」とし、既存ワクチンの有効性の検証が終わるまで「数週間、我慢する必要がある」と語った。

ビオンテックのサヒン氏は、オミクロン株は接種済みの人にも感染するが、入院や集中治療が必要な重症に至る可能性は低いと主張。「行政は慌てることなく、3回目接種の計画を進めてほしい」と述べた。

サヒン氏によると、同社のワクチンには「2つの異なる防御層」がある。1つ目の防御層はウイルスの感染を防ぐ抗体をもたらし、2つ目は感染した細胞を攻撃するT細胞を動かす免疫システムをつくる。

抗体は2回目接種後5カ月程度で弱まることが研究で分かっており、感染力の強いデルタ株よりも多様な変異を持つオミクロン株は「抗体を回避する可能性が高い」。他方で、2つ目の防御層である免疫システムを逃れた変異株はこれまでに存在せず、「オミクロン株も完全にT細胞の攻撃を避けるのは難しい」という。

同社では約2週間をかけて、実験で既存ワクチンの有効性を確かめる方針。新型ワクチンが必要になった場合に出荷までにかかる時間は「約100日」といい、ファイザーのブーラCEOと同様の見通しを示した。

1回接種型のワクチンを出荷する米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンも有効性の検証後、必要に応じて新型ワクチンの開発を続けるとしている。

ロイター通信によると、英アストラゼネカとワクチンを共同開発した英オックスフォード大は30日、オミクロン株感染による重症化を既存ワクチンで防げないという「証拠はない」と指摘した。その上で、必要であれば、オミクロン株に対応した更新版のワクチンを迅速に開発する用意があると説明した。

ロシアで国産ワクチン「スプートニクV」を開発したガマレヤ記念国立疫学・微生物学研究センターのギンツブルク所長は29日、露国営テレビで「オミクロン株に対応するワクチンの開発を10日以内に完了させる」と表明した。露政府による承認作業も約1カ月半で終わるとの見通しを示した。ワクチンはスプートニクVを改良する形で開発するという。(ニューヨーク 平田雄介、ロンドン 板東和正、モスクワ 小野田雄一)

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