新潟の洋上風力、協議会議論のポイント 東大・松本客員准教授に聞く

東大教養学部の松本真由美客員准教授(本人提供)
東大教養学部の松本真由美客員准教授(本人提供)

基金で要調整

--議論の中で合意形成が難しかった部分は

「基金の用途や売電収入の何%を積み立てるのかについて漁業者からさまざまな意見が出され、調整する必要が生じました。漁協に基金を設置し、用途は一番影響を受ける漁業関係に使いたいとの意見も出されましたが、議論の結果、地元自治体に設置し、使い道については地元自治体と関係漁業者の意向を尊重するという形で落ち着きました」

--売電収入の何%を積み立てることになりましたか

「再生可能エネルギーでつくった電気の固定価格買い取り制度(FIT)では洋上風力の買い取り期間は20年となっています。私が参加した協議会では、20年間の売電収入から0・5%を目安に基金に積み立てることになりました。他の協議会の議論をみましても、現時点で0・5%が一般的となっています」

「洋上風力事業からの売電収入が地域に還元される仕組みにより、地域活性化や地方創生が進むことが期待されます」

まずは意見を

--協議会の議論をスムーズに進めるコツは

「協議会の場で、不安や懸念材料があればどんどん出すことが大事です。地域として要望があれば、意見として積極的に出していきましょう。要望が全てかなうとは限りませんが、地域の価値観を全員で共有することは重要です」

「地元自治体である秋田県は、協議会とは別に委員会やワーキンググループの形式で漁業関係者などと協議する場を設け、そこでの意見を協議会で報告していました。協議会の前段階で地元自治体が漁業、船舶関係者と意見交換や調整をすることは、協議会の議論をスムーズに進めるポイントだと思います」

--有望区域が洋上風力の開発に問題がなく、協議会で関係者の合意が得られれば、国から「促進区域」に指定されます。促進区域に指定された後の作業は

「国が再エネ海域利用法に基づき、促進区域の海域で洋上風力発電事業を行うべき事業者を公募で選定します。希望事業者は、発電事業の内容や電力供給価格などを記した公募占用計画を国に提出。国がその計画を審査、評価し、第三者委員会の意見も踏まえて事業者を選定します」

(本田賢一)

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