嚥下食レシピ大賞 リアルすぎる「蟹刺し」の中身

大賞を受賞した「おうちで作ろう『蟹刺し』~ ディップソースを添えて」(ニュートリー提供)
大賞を受賞した「おうちで作ろう『蟹刺し』~ ディップソースを添えて」(ニュートリー提供)

栄養食品メーカー「ニュートリー」(三重県四日市市)が募集していたオリジナル嚥下(えんげ)食のレシピコンテストで、大阪府守口市の江端重夫さん(82)、真澄さん(79)夫婦と娘の左恵子さん(54)が考案した「おうちで作ろう『蟹刺(かにさ)し』~ディップソースを添えて」がレシピ大賞に輝いた。左恵子さんは「試行錯誤の末に生まれたアイデアや調理が評価されてうれしい」と受賞を喜んだ。

嚥下食は、加齢や脳梗塞などの病気が原因で食物をのみ下す嚥下機能に障害のある人のために考案された介護食。飲み込みやすさに加え、味も外見も一般料理とそっくりにして患者らに「食べる楽しみ」を取り戻してもらうための料理だ。

コンテストには全国の病院、福祉施設、調理師専門学校、個人などから37点のレシピが寄せられた。10月の最終審査で入賞作品が決まった。

大賞を受賞した江端さん一家は、16年前に下咽頭がんの手術を受けた後遺症で嚥下が困難となった重夫さんの食欲増進を図ろうと、嚥下食の調理を始めた。

好物のカニを楽しんでもらおうと、斬新なレシピの調理に挑戦。カニの身やスープなどをオイルやとろみ粉末と一緒にミキサーにかけるなどして、カニのペースト(練り物)などを作った。

 嚥下食「蟹刺し」の試作などに取り組む江端重夫さん(左)ら=大阪府守口市(ニュートリー提供)
嚥下食「蟹刺し」の試作などに取り組む江端重夫さん(左)ら=大阪府守口市(ニュートリー提供)

左恵子さんは「作品の赤や黄色は食用色素を使うなどして色付けした。最終審査会のプレゼンテーションでは、父も調理や実食に参加し、食べてみたいと思えるものをチームで発表し、父も幸せな気分になった」と振り返る。

ペースト状のミキサー食やきざみ食のレシピにさらにひと手間加えて、見た目や味が本物そっくりとなるように再構築した嚥下食。高齢化が進むなか、今後も嚥下障害の患者の増加も予想される。

ニュートリーは「飲み込みを改善し、生活の質(QOL)を高める手段として嚥下食の進化が期待されている」と話す。

コンテストではそのほか、優秀レシピ賞に修学院札幌調理師専門学校(北海道)の「新ドゥーブル・フロマージュ風チーズケーキ」が選ばれた。

嚥下とは、食物を口から咽頭、食道、胃へと運ぶまでの一連の動作のこと。

通常、食物が喉を通ると反射的に筋収縮が起きて声門が閉じ、食物が気管などに入るのを防ぐ。しかし、加齢、脳梗塞、咽頭がん、喉頭がんなどが引き金となって嚥下機能に障害が出ると、食物が気管や気管支に入って引き起こされる誤嚥性肺炎などになる可能性がある。

厚生労働省(令和2年の人口動態統計)などによると、誤嚥性肺炎の死者数は4万2746人で死因の6位を占め、このうち約95%が70歳以上という。