朝晴れエッセー

大喜利の効能・11月28日

携帯電話がなかなか買い替えられない。話題の新製品や秋冬モデルと聞くと、そろそろ替え時かなぁと思いながら替えられない淡いブルーの携帯電話。

何でもお気に入りを延々と使う性分なのだが、昨年の一件以来、ますます買い替えられなくなってしまった。

親父が亡くなる前日、珍しく病室から電話をくれていた。平日の仕事中で着信には気付かなかったものの、これまた珍しいことにメッセージを吹き込んでいた。

折しも世間は感染拡大の真っ最中で、面会もできない状況。いったい何事だろうと再生してみたけれどほとんど聞き取れない。最期は呼吸器のお世話になるほどだから、ぜーぜー言っている上に声も小さい。

娘2人の協力で一部は分かったが、「お父さんや、〇〇〇は〇〇〇〇や、気ぃ付けや」と母でも肝心の部分が分からない。

まるで大喜利だ。父親が最期に息子に残す言葉。軽いはずないが何度聞いても中身の想像がつかない。酒や女には気を付けろとでも言ってみたか。

人様に頼むのもなんだか親不孝で気が引ける。そんな訳で時折家族が寝静まった後にそっと再生しては耳をそばだてる。今日もやっぱり分からない。ただ伝わってくるのは親父の闘病の跡と家族への思いやり。

結局、自分が子供に最期の言葉を残す瞬間まで分からないのかもなと達観しつつ、秋の夜長に2回、3回と再生ボタンを押す。

親父、この大喜利は難しすぎるわ。

でもありがとう。癒しの万能薬やと思って携帯はそのままにしときます。

森部勝巳 48 大阪府寝屋川市