「ジャンプの聖地」下川町から始まる五輪への道 佐藤慧一

10月に行われたノルディックスキーの全日本選手権男子ジャンプノーマルヒルで2位に入った佐藤慧一(左)。優勝した小林陵侑(右から2人目)、3位の小林潤志郎と揃って表彰台に立った =札幌市
10月に行われたノルディックスキーの全日本選手権男子ジャンプノーマルヒルで2位に入った佐藤慧一(左)。優勝した小林陵侑(右から2人目)、3位の小林潤志郎と揃って表彰台に立った =札幌市

来年2月の北京冬季五輪で、新星として期待されているのが、ノルディックスキー男子ジャンプの佐藤慧一(雪印メグミルク)だ。昨季は初めてワールドカップ(W杯)に開幕戦から参戦し、着実に実力を伸ばしてきた。五輪で3個メダルを獲得した葛西紀明(土屋ホーム)ら名だたるジャンパーを生んだ北海道下川町に移り住んだことで始めた〝天職〟。親友との切磋琢磨の末に、夢舞台への切符をつかみ取る。

ノーマルヒル男子で2位になった佐藤慧一の2回目=宮の森
ノーマルヒル男子で2位になった佐藤慧一の2回目=宮の森

今季のW杯は、佐藤慧にとって不本意な形で開幕した。20日にロシアで行われた開幕戦では、ラージヒルで2回続けてK点の120メートルにも届かず、出場した日本勢6人の中で最下位の29位。翌21日の第2戦では、2回目にも進めず37位に終わった。今夏は、助走姿勢を見直してきたが理想の形をなかなか見いだせず、自分のジャンプを固めきれなかった。

ただ、10月22日の全日本選手権ノーマルヒルでは、1回目に94メートルを飛んでトップに立つと、飛躍に不利な追い風だった2回目も89メートルにまとめて、エースの小林陵侑(土屋ホーム)に次ぐ2位。2季連続での開幕戦からのW杯メンバー入りを勝ち取り、「夏よりは内容があるジャンプができている。調子は上向き」と手応えを口にしていた。本格的な冬シーズンが始まったばかりで、適応が進めば結果もついてくるはずだ。

人口3000人余りの町から、過去に7人の五輪選手を輩出してきた下川町。野球が大好きだった少年が、小学3年で「ジャンプの聖地」に移住したことで、運命が決まった。同級生だった伊藤将充(土屋ホーム)に誘われ、「めちゃめちゃ迷ったけどジャンプを始めていた」。小学4年での〝初飛行〟は今も鮮明に記憶しており、「下川の20メートル級(のジャンプ台)をジャンプスキーで飛んだときがすごく怖くて、先輩に後押しされながら飛びました」。恐怖心を乗り越えた先にある浮遊感が病みつきになり、どんどんのめり込んでいった。

下川中、下川商高とジャンプの王道を進み、高校では国体少年の部で優勝するなど実績を残してきた。高校卒業後、ジャンプの名門、雪印メグミルクに入社。W杯は2019年の札幌大会で初出場した。昨季は初めて開幕戦からW杯メンバーに入り。個人第5戦で過去最高の5位に入るなど好成績を残し、個人総合で20位と飛躍の年となった。

成長を支えてくれた親友への感謝の気持ちは忘れていない。ジャンプの世界に導いてくれた伊藤将とは、異なる所属チームになった今でも連絡を取り合う。「お互いにとってヒントになるかもしれない。聞くことでプラスになる」と、ジャンプについての技術的な相談でも気兼ねなくする間柄だ。長期の海外遠征になったときも「チームメートとは違う視点で話してくれたりして、そういう友達がいるのは大きい。彼がいないと僕はジャンプもやっていないし、大切な関係」と熱く語る。

五輪切符を勝ち取るためには今季のW杯でも結果が求められるが、臆するところはない。「ジャンプを始めたころから(五輪は)漠然とした目標ではある。五輪でメダルを取りたいという思いはずっと持ち続けている。自分が(五輪に)出るチャンスが目の前にあると思うと、すごく楽しみ」。夢舞台へ一歩ずつ進んでいく。(運動部 小川寛太)

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