農家歓迎も時期や質に不安 技能実習生の入国再開

茨城県の農家でトマトの収穫を行うベトナム人技能実習生のグエン・カック・ビエンさん=17日午前11時45分、同県鉾田市(永井大輔撮影)
茨城県の農家でトマトの収穫を行うベトナム人技能実習生のグエン・カック・ビエンさん=17日午前11時45分、同県鉾田市(永井大輔撮影)

新型コロナウイルス禍に伴う外国人技能実習生の入国制限が緩和され、条件付きで新規入国が可能となった。実習生の受け入れ団体は事業再開の準備を急ぎ、担い手不足を実習生で補ってきた農家は歓迎の声を上げる。ただ、現場での実習開始が来春にずれ込む地域もあり、農作物の収穫期に間に合うかどうかの戸惑いが聞かれる。実習生の質への不安も拭えず、外国人頼みの農業は曲がり角を迎えている。

東京都中央卸売市場の青果物取扱高が17年連続1位で、「首都圏の台所」と呼ばれる茨城県。農林業分野の外国人技能実習生の受け入れは全国最大規模で、JAグループ茨城が支援する監理団体「エコ・リード」(水戸市)の安田則夫理事長は「受け入れ再開は本当にうれしいが、手放しでは喜べない」と複雑な心境を吐露する。

コロナ禍の入国制限で、エコ・リードがベトナムや中国から受け入れるはずだった103人の実習生は現地で待機状態に。日本政府が今月8日に新規入国を容認したのを受け、今年3月までに国内の在留資格を取った36人は来年1月から入国申請が可能になった。

ワクチン接種が制限緩和の条件だが、ベトナムや中国で使われている中国製ワクチンの場合は緩和対象にならず、入国後14日間の待機が求められる。その後も日本語研修などに1カ月程度かかり、実際に農家で実習を始められるのは来年3月ごろになる見通しだ。

実習生をめぐっては昨年10月にも新規入国が認められたが、変異株の流行で翌1月には停止された。コロナの今後の流行状況によっては、政府が再び受け入れを中断する可能性もあり、安田さんは「事業がコロナ禍前のように円滑に進むかの不安はある」と漏らす。

実習開始時期がはっきりしないのは、農家にとっても悩ましい問題だ。同県特産のメロンは約半年かけて育てるため、作付けや収穫の時期ごとに必要な労働力が異なる。収穫期ほど多くの人員がいるが、実習生を見込んで作付けしたのに実習開始時期がずれた場合、収穫しきれずに廃棄せざるを得ない恐れがある。

同県鉾田市でメロンやミニトマトを栽培する農家の小林英春さん(63)は「実習生がいないと仕事が成り立たない。受け入れ再開は非常に助かる」と喜ぶ一方、「実習生がいつ来るのかを見通せないと、作付け量などの予定が立てにくいのも事実」とこぼす。

小林さんは例年3人の実習生を受け入れているが、入国制限で2人に減った状況が続いている。今夏のトマトの作付面積は約5000平方メートルで、例年より4割近く減らした。今は来年のメロンの作付けを決める時期で、新規の実習生が収穫のピークである5、6月に間に合うかどうかで苗の発注量が左右されるという。

実習生の質の確保を懸念する声もある。エコ・リードはコロナ禍前、農家を連れて海外の送り出し機関を訪れ、実習生を面接で選抜してきた。だが、相手国の入国制限で面接を行えなくなり、吟味が不十分なままで初めて実習生を受け入れざるを得なくなった。

安田さんは「高齢化と後継者不足で、担い手の減少が深刻な県内の農業現場は、実習生に支えられているといっても過言ではない。彼らが来なくなれば、野菜の生産量は相当落ちる」と危機感を示した。(永井大輔)

会員限定記事会員サービス詳細