近ごろ都に流行るもの

「男性のハンドケア」〝Z世代〟発信ネイルサロンも

ネイルを通して、Z世代のジェンダーレスな世界観を発信する今瀧健登さん(重松明子撮影)
ネイルを通して、Z世代のジェンダーレスな世界観を発信する今瀧健登さん(重松明子撮影)

手指のきれいな男性が増えている。人類の進化⁉ というわけではないようで、お手入れに気を使うメンズが増えているのだ。ジェンダーレスなZ世代(主に1990年代後半以降に生まれた若者)を中心に広がっている。コロナ禍の2年。マスクで隠れる顔よりも、手が清潔感などの印象を左右するようになった。自分の視界に入る手元がきれいだと気分も上がる。そんな美意識も男女共通になっている。男性用ネイルサロンが登場し、ハンドクリームも男性向けの商品が増えている。

筆者の知人男性(25)は普通のサラリーマンだが、つるんとした手をしている。「実は指と甲を除毛しています。夏場にすねを除毛するのと同じクリームで。今はマスクで顔が隠れているので、手の印象って特に大事だと思う」

どんなクリームを使っているのかと聞くと、結構値が張る。そっちゃえば?「女性より毛が太いので余計目立つ」という。男性も大変であること。

寒色系が人気

スモーキーカラーのジェルネイルがしゃれているのは、Z世代に向けた企画マーケティング会社「僕と私と」(東京都渋谷区)の今瀧健登社長(24)だ。

「僕たちZ時代はジェンダーレス。今年1月に初めてマニキュアを塗ったとき、テンションが上がった。手を洗う、飲み物を持つ…。指先がきれいだとうれしいのは女性と同じ。でも、男性が利用しやすいネイルサロンがなかったので作りました」

男性も入りやすい、カジュアルでシャレた雰囲気の「カンゴールメンズネイル」=東京都渋谷区(重松明子撮影)
男性も入りやすい、カジュアルでシャレた雰囲気の「カンゴールメンズネイル」=東京都渋谷区(重松明子撮影)

今瀧さんは、東京・原宿で英国「カンゴール」ブランドの美容院を展開するグランネスの橋本幸生社長(46)と協業し、10月に「カンゴールメンズネイル」サロンをプレオープンした。12月から本格稼働する。価格はジェルネイルが5500円など。

ピンクなど暖色系中心の女性向けと違って、グレーや濃紺、メタリックなど寒色系が人気。色は塗らずに爪を磨いてつやを出したいという営業マンが来店したり、メンズファッションを着こなす女性から「行ってもいいですか?」という問い合わせが来たりもする。「男性向けといっても、LGBTQ含めて全て大歓迎。かっこいいネイルを提案します」と橋本さん。原宿の男性アパレル店員に無料体験の場も提供するという。

「ファッションの先端である原宿を起点に、ジェンダーフリーの新しい文化を起こしたい」という今瀧さん。自身の中性的な資質も自覚しており、横浜国立大教育人間科学部で家庭科の教員免許を取得した。「Z世代に性別の概念が少ないのは、受けてきた男女平等教育が大きい。自分が最初にネイルしたときには母親に驚かれたが、今は『いいね』といわれる。性別の縛りなく、みんなが自分らしく幸せになれる社会を目指して活動していきたい」

売り上げ2・5倍に

東京・渋谷をはじめ全国139店を展開する「ロフト」では、自然な美爪に見せる「オルビス」の男性用ネイル保護マニキュア(1320円)が売れている。淡いピンク1色だったが、今秋深みのある3色が新登場した。

ハンドクリームでは千円以下から1500円くらいまでの価格帯で、消毒を兼ねるなど機能性の高い商品が人気。

ロフトでも扱っている「バルクオム」は、コロナ禍にあっても成長を続ける有力メンズ化粧品ブランドで、昨年の売り上げは前年比2・5倍に伸びた。手のお手入れは「ザ ハンドジェリー」(2200円)。肌に伸ばすと質感が緩くなり水分に戻る「形状記憶ゲル」を採用し、べたつきが苦手な男性の感覚を意識した設計。パッケージもアルミ素材でクールだ。

ロングセラーも好調

「熱心に母が勧めし『ユースキンA』という名のハンドクリーム」。昭和62年に発行され社会現象を起こした、俵万智の歌集「サラダ記念日」に収録された一首である。

ひび割れ、あかぎれなど、水仕事で酷使する主婦の手荒れ対策にと開発された商品は、この年すでに発売30年のロングセラーだった。さらに33年後の昨年リブランディングし、家族で使える大きめのポンプ型が好調という。主婦だけでなく夫、息子へとユーザーが広がっているのは、男性の家事参加の表れなのか。

昭和、平成、令和。こつこつ進んだジェンダーギャップの改善を、男性たちの美しい手が物語っている⁉(重松明子)

会員限定記事会員サービス詳細