記者発

無駄な投票なんてない 大阪文化部次長・渡部圭介

衆院選の演説には多くの人が集まった =10月30日夜、大阪市中央区(恵守乾撮影)
衆院選の演説には多くの人が集まった =10月30日夜、大阪市中央区(恵守乾撮影)

今夏の東京五輪のときもそうだったが、何か社会的な関心事が浮上するたびに、社会部から「ツイッター上の『世論』を読み取り、何か書けないか」という相談が舞い込む。ツイートの収集と解析ノウハウを蓄積しながら、記事化してきたからだが、10月31日投開票の衆院選の前にも案の定、声をかけられた。

選挙関連では昨年11月1日投開票の、いわゆる「大阪都構想」をめぐる住民投票でもツイートの解析を担当した。例えば「図書館」という言葉の急増から、大阪市の廃止により図書館の行く末に関心が向いていることがうかがえ、社会部記者とともに論点を整理する記事をこしらえた。街の枠組みを決める、重い一票を投じる際の判断材料になる情報とは何か。模索しながらの取り組みだった。

衆院選でも同様のことができないかと考えながらツイッターをながめていたが、新型コロナウイルス対策、経済、安全保障、福祉など世の関心の幅が広い。投票日までに争点を整理しようにも、取材に当たる記者も時間も限られる…と頭を抱えているうちに投票日が来てしまった。争点が多岐にわたる国政選挙では人々の関心をすくう難しさを痛感し、来夏の参院選に向けて大きな宿題を背負わされた。

そして、ツイッター上で投票所の外に延びている有権者の行列の写真を見かけた。コロナ下の〝密〟対策で入場制限を行っていたからだろう。一方で、これらの写真を見ていて「ひょっとして投票率が大きく上がるかも」と錯覚した自分もいる。ふたを開けてみれば投票率は55・93%と戦後3番目の低さだった。

投票所の行列写真に、ツイッターにあふれる与党批判を重ね、政権交代といった大きな変化を予感した人もいる。「投票に行ったが何も変わらなかった」といったツイートも目にしてそう感じたが、こうした一文を目にした人たちの間で「投票に行っても意味がない」という空気が増幅するのを案じている。

投票率が低い若年層を中心に、日常的にツイッターなどソーシャルメディアに触れる時間は長い。変えたい人も、変えたくない人も、無駄な一票なんてないことをどう伝えていけばいいのか。社内外を問わず、課題を共有してみたいのだけれども。

【プロフィル】渡部圭介

平成13年入社。水戸、福島、京都の各総支局を経て大阪社会部で行政や警察取材を担当。29年から文化部、今年10月から同次長。