アレフへ抜かぬ伝家の宝刀 公安庁「再発防止処分」

公安調査庁の和田雅樹長官
公安調査庁の和田雅樹長官

オウム真理教の後継団体「アレフ」の活動を事実上停止させる「再発防止処分」について、公安調査庁が今月、請求を撤回した。アレフは今年5月以降、団体規制法で3カ月に1度の提出が義務づけられる活動報告提出を怠っており、処分が適用されれば施設の使用や信者の勧誘が禁止されていた。同法が平成11年に施行されて以降、公安庁の「伝家の宝刀」ともいえる処分には至っていない。

活動報告書は一部不報告

「遅れていた分です」

11日昼過ぎ、公安庁を訪れたアレフ信者らは手短にそう伝えると、提出が遅れていた活動実態の報告書を職員に手渡した。だが、内容を確認した職員らはすぐに、収益事業など一部必要な記載がないことに気が付いた。

5月から約半年間続いた報告書の未提出を受け、公安庁は先月25日、アレフの活動を事実上停止させる「再発防止処分」を公安審査委員会に請求していた。その後、不十分な内容の報告書が遅れて提出されたが、公安庁は今月19日、処分の請求を撤回した。

法的には一部不報告であっても再発防止処分の対象とすることは可能だ。だが、公安庁は「今回の請求は全ての報告がないことが前提。その前提が崩れた以上、1度撤回するのが妥当」とする。一方で「今後もアレフの一部不報告が続けば再度、処分を請求する」と強調する。

過去に適用の例なく

不記載だった収益事業に限れば、アレフは昨年2月から報告義務を無視し続けている。収益事業の内容や得た資産は、組織の状況や危険性を把握する上で最も重要な情報の一つだが、公安庁は1年半以上にわたり文書などによる指導にとどめ、今年10月まで、処分の請求には1度も踏み切っていなかった。

再発防止処分は施設の使用のほか、お布施の受け取りなども禁止できる。だが、平成11年に制定された団体規制法に基づく処分が、過去に適用された例はない。

「オウム真理教犯罪被害者支援機構」の理事長を務める宇都宮健児弁護士は「前例がなく、公安庁の対応の是非の判断は難しい」としつつ、「もう少し早い段階で再発防止処分を請求していれば、アレフにプレッシャーを与えることができたはずだ」と指摘する。

一方、元公安庁第二部長としてオウムを調査・分析した菅沼光弘氏は「解散に追い込みかねない強力な処分だけに、極めて慎重になっているのだろう」とする。一部の情報を報告しないことを受けてむやみに処分を出せば、「憲法上の集会・結社の自由の侵害」として、アレフ側から訴えられることも想定されるという。菅沼氏は「現状、アレフにテロなどの大きな危険がないのであればぎりぎりまで処分は出さず、穏便にことを進めたいのが公安庁の本音ではないか」と推測した。

再発防止処分 オウム真理教の後継団体による無差別大量殺人の再発防止のため、平成11年施行の団体規制法に定められている処分の1つ。対象団体による爆発物の製造や活動実態の報告義務違反が発覚した際などに、施設の使用や信者の勧誘を禁止できる。処分期間の上限は6カ月。最小限の適用が求められており、公安審査委員会が公安調査庁長官の請求に基づき適否を決定する。