首相、ハイペースで車座対話 政策発信も

NTTの光技術を活用した新たな通信基盤「IOWN(アイオン)」を視察し、関係者と意見交換する岸田文雄首相(中央)=27日午後3時15分、東京都武蔵野市のNTT武蔵野研究開発センタ(代表撮影)
NTTの光技術を活用した新たな通信基盤「IOWN(アイオン)」を視察し、関係者と意見交換する岸田文雄首相(中央)=27日午後3時15分、東京都武蔵野市のNTT武蔵野研究開発センタ(代表撮影)

岸田文雄首相が10月の就任以降、国民から直接意見を聞く「車座対話」をハイペースで続けている。首相は対話の一部を公開したり、対話後に記者団の質問に応じたりして、自身の強みとする「聞く力」をアピールするとともに、政権の重要政策を示す発信の場としても活用している。

首相は27日、東京都武蔵野市にあるNTTの関連施設を訪れ、光技術を活用した新たな情報通信基盤に関する研究などを視察し、研究者らから意見を聞いた。

その後、記者団の取材に応じ、経済対策に技術開発や投資を後押しする内容を盛り込んだとして、「これからもデジタル社会の推進に向けて後押しをしていきたい」と強調した。

首相は10月9日、東京都内で開いた医療従事者との意見交換を皮切りに車座対話を重ね、27日で16回目になった。多い時は週4回のペースで行っている。

車座対話は政権の政策を発信する機会でもある。

首相は12日、従業員の人材育成や賃金引き上げに積極的とされる企業幹部との対話後、記者団に対し、デジタル人材の育成のため、3年間で4000億円の政策パッケージを創設すると明らかにした。27日も水際対策の強化など新型コロナウイルス対策を説明した。

自民党は野党時代に総裁を務めた谷垣禎一氏が全国各地の有権者の元に出向いて直接意見を聞くなど、対話集会を開く伝統がある。首相も同様に、昨年の党総裁選で敗れて以降、有権者の声を政策に反映するために全国各地を回り、対話を重ねてきた。その姿勢は今でも変わらない。

政府内では今後、対話の対象を自治体の首長や職員などに広げるアイデアもある。新型コロナ対応を含む経済対策の裏付けとなっている国の予算が適切に使われているかどうかなどを確認するためだ。政府高官は「予算を付けて終わり、ではなく、現場の求めに応じているかの確認が重要だ」と指摘する。

首相は今後、「聞く力」を政策に反映させる実行力も問われることになる。(石崎直人、宮川真一郎)

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