いきもの語り

出番待つマジックショーの華、ギンバト

日本奇術協会の加藤明彦事務局長と相棒のハトたち。静かに加藤さんの手の上に止まっている=26日午前11時22分、新宿区(永井大輔撮影)
日本奇術協会の加藤明彦事務局長と相棒のハトたち。静かに加藤さんの手の上に止まっている=26日午前11時22分、新宿区(永井大輔撮影)

マジックショーで、どこからともなく姿を現す白いハト。ギンバトと呼ばれる改良品種で、ショーの華として歓声を集める。しかし、新型コロナウイルスの影響で、イベントやマジックバーなどの舞台が休業・縮小し、多くのハトは現在、待機状態に。マジシャンたちは、相棒のハトが再び脚光を浴びる日を待ち望んでいる。

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「舞台で一番盛り上がるのは動物。中でもギンバトは小さくて扱いやすく、羽ばたくと非常に大きく見える。白は膨張色で、一層舞台を引き立ててくれます」

日本奇術協会の事務局長、加藤明彦さん(61)は、そう説明する。

ギンバトは小柄で飛ぶ力が弱く、野生では生きられない。人が餌を与える必要がある観賞用の品種だが、マジックにおいては小さいため扱いやすく、白い姿はマジシャンが着用するダーク系のえんび服とも相性がいい。「気品ある白いハトが黒の衣装とマッチする。フォーマルな格好でヒヨコを出しても、引き締まらないでしょう」と加藤さん。

ところで、「マジックといえば白いハト」というイメージは、なぜ定着しているのだろうか。そのきっかけは、1960年公開のイタリア映画「ヨーロッパの夜」だという。ナイトクラブなどで活躍するショーマンを描いており、チャニング・ポロックが披露したハト出しマジックは多くの観客を魅了し、世界中のマジシャンが影響を受けた。

「師匠や兄弟子もみんなポロックの手順をまねてハト出しマジックをやっていました。技術もルックスも抜群で、スター性あふれる彼の姿に先輩方は魅了されていました」

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マジシャン歴約40年で、現在も「ドルフィン」の芸名で活躍する加藤さんは、10羽のハトを飼育している。「おとなしいやつや、血気盛んなやつ、触ると羽を広げて威嚇するやつ、こっちを向かないやつといろいろいます」と笑う。

全国各地のイベント会場や劇場などでマジックを披露しているが、コロナ禍以前は月に15日ほどあったハトの出番が、現在は2、3日ほどにまで減少。相棒はお休み気味で、「ハトは放っておくと、言うことを聞かなくなるので、朝晩に羽ばたかせるなどの運動をさせています」と話す。

手軽にマジックを楽しめるマジックバーも、コロナ禍で休業や規模縮小が増えている。新宿区の「手品家」も休業した店の一つだ。店長でマジシャンの東邦新悟さん(43)によると、新型コロナの流行前は客席約50席にマジックを行うステージもあった大規模店だったが、国の休業要請協力金などでは維持できず、今年8月に休業。周囲の助けを借り、今月から規模を縮小して「手品家 新宿エール店」として復活した。

新店はカウンターのみの12席で、トランプなどのテーブルマジックが主体だ。ステージもないため、相棒のハトは姿をひそめる。

東邦さんは、取材のため特別にハトを連れてきてくれた。手の上で羽ばたくハトを見ながら「こいつは元気なやつですよ」。相棒の出番を作るため、「近いうちにカウンターでも披露できる環境をつくっていきます」と笑みを浮かべた。

(永井大輔)

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