ビブリオエッセー

優しく響く心地よさ 「美人の日本語」山下景子(幻冬舎文庫)

仲間数人で朗読ボランティアを始めて約17年になる。行く先は学童保育や保育園もあるが主にデイサービスである。出し物は昔話や童話をはじめ紙芝居からエッセーまで。この『美人の日本語』もずっと活用させてもらってきた。4月に始まり翌年3月まで、四季に合わせた一日一語、366の美しい日本語が並ぶ。

美人の日本語。まず書名に魅かれた。慣れ親しんで聞き流してしまう日本語の本来の意味や著者の言葉に寄せる思いが綴られている。

例えば「おめでとう」の語源は「愛(め)で甚(いた)し」。「愛づ」は「美しいもの、すばらしいもの、かわいいものに深い愛情を寄せる気持ち」を表し、「甚し」は「はなはだしいこと」。転じて祝福の言葉として定着した。

「ご馳走」は豪華な食事のことではない。駆け回って世話をしたり、力を尽くしたり、もてなしたりすることだった。よく知られた言葉だけでなく、「君影草」(鈴蘭の異称)、「紅(べに)差し指」(薬指)、「天泣」(雲がないのに降る雨)、「知音(ちいん)」(親友)…。日本語の優しさと奥ゆかしさが心に響く。その言葉があるというのは感性や文化が長く受け継がれてきたということだ。だから死語になるのは寂しい。

デイサービスの場でも、美しい日本語は聞いてくださる方々と私たちとをつないでくれる。ウトウトされていた方も「この言葉の本来の意味をご存じですか?」と呼びかけると興味を示し、深くうなずかれたりする。しっかりこちらを見てくださるのが嬉しい。

長く続けていると私たちの年齢が聞いてくださる方々に近づいてきた。できるなら少しでも長く朗読させていただく側でいたいと思うが、美人の日本語たちが傍らにいてくれたら、聞く側の時間も心地よいひとときになるだろう。

神戸市東灘区 内藤真知子(68)

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