アニメ「千と千尋の神隠し」が舞台に 来春、東京で世界初演

「千と千尋の神隠し」のメインキャストとスタッフら(寺河内美奈撮影)
「千と千尋の神隠し」のメインキャストとスタッフら(寺河内美奈撮影)

平成13年の公開以来、世界で愛され続け、15(2003)年には米国アカデミー賞長編アニメーション映画部門賞を受賞したスタジオジブリ不朽の名作「千(せん)と千尋(ちひろ)の神隠し」(宮崎駿=はやお=監督)が舞台で演じられる。来年3月に東京・帝国劇場で世界初演された後、4月に大阪、5月に福岡、6月に札幌、6・7月に名古屋で上演される。壮大で独創的な世界観が舞台上でどう繰り広げられるのか注目される。

「千と千尋の神隠し」は、昨年末に同じアニメ映画の「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」に抜かれるまで、日本歴代興行収入記録(316億8千万円)を長年保持してきた国民的人気作だ。

今回、舞台の演出は、ミュージカル「レ・ミゼラブル」を手掛けた世界的演出家、ジョン・ケアード。主演の千尋役は橋本環奈と上白石萌音(かみしらいし・もね)がダブルキャストで演じる。映画で湯屋の魔女、湯婆婆(ゆばーば)と双子の姉、銭婆(ぜにーば)の声を担当した女優の夏木マリが舞台でも同役を務める。カオナシは、ダンサーが身体表現を使って演じるという。

「皆さんのもの」と快諾

11月9日に都内で行われた製作発表会見で、スタジオジブリ代表取締役でプロデューサーの鈴木敏夫は、映画公開から20年余を経て舞台化されることについて「感慨深い」と話した。

宮崎監督といえば、過去には「風の谷のナウシカ」を実写化したいというハリウッドからのオファーを含め、すべての申し出を断ってきたほど、作品への思い入れが強い。ただ同作の歌舞伎化については許諾し、一昨年初演された。

鈴木は、「千と千尋の神隠し」の舞台化について、こんなエピソードも披露した。ケアードから直接、舞台化の打診を受けた際、宮崎監督が周囲の予想に反して「いいよ」と快諾。「あんなに多くの人に支持されたのだから、もう俺のものじゃない。皆さんのものだ」といった感じだったという。

ケアードの妻で、今回の舞台化に当たり共同翻案と演出補佐も担う今井麻緒子は「子供たちはすごく(ジブリ作品に)魅了され、わが家の何%かはジブリでできているといっても過言ではないほど」と、思いを明かした。

ケアードも、ジブリ作品の大ファンだ。子供たちと一緒に「千と千尋の神隠し」を見たケアードは「演劇的な作品。絶対に舞台になる」と判断。スタジオジブリ作品だけでなく、「未来少年コナン」など宮崎監督の作品をすべて見たという。「子供の心の中に入り込む天才的な才能は、チャールズ・ディケンズやアンデルセン、ルイス・キャロルに匹敵する。歴史に名を残す人だと思う」

ケアードは「二次元で描かれたものをどう舞台上でやるのかが重要。映画をまねしただけなら、ただ三次元バージョンを作っただけになってしまう」と、スタッフや出演者らとワークショップを重ね、アイデアを出し合っているという。

公式サイトは5カ国語

舞台「千と千尋の神隠し」の公式サイトは世界中のジブリファンのために日本語だけでなく、英語、フランス語、中国語、韓国語も用意。東宝側によると、ブロードウェーをはじめとする欧米やアジアを含め、各国のプロデューサーが関心を持っているという。東宝常務執行役員の池田篤郎氏は「映画が世界を席巻したように、演劇もどこかの国で上演されることを祈っている」と語った。

海外での上演について記者から問われたケアードは、「日本的で日本をリスペクトしている舞台だから、海外の人が喜ぶような作品にしたい」と述べた。

(水沼啓子)

【あらすじ】10歳の少女、千尋は両親と車で新居に向かう途中、トンネルの向こう側に迷い込む。そこは八百万(やおよろず)の神が住む世界。食べ物を無断で口にした両親は豚にされてしまう。元の世界に戻れなくなった千尋は謎の少年、ハクに助けられ、魔女の湯婆婆が仕切る湯屋「油屋」で千という名前を与えられ、働くことに。

東京公演は来年3月2~29日。プレビュー公演は2月28日、3月1日。