家族がいてもいなくても

(712)振り返れってみれば、必然

イラスト・ヨツモトユキ
イラスト・ヨツモトユキ

この1年、取り組んでいた「原っぱ」がとりあえず完成した。

「ミニミニギャラリー」と「原っぱ売店」と「パペットハウス」と「災害用トイレ練習室」。

小さなガーデンハウスが4つ、なんにもなかった「原っぱ」に出現している。

ハウスの前の斜面には、一応、観客席用のベンチも並べ、「ここが野外劇場だよ~」という雰囲気も作った。

シンボルツリーの松の木の下に1人で佇(たたず)んで眺めていると、「よくやったなあ」と、しみじみとした感慨が湧いてくる。

60代から80代。世間では高齢者と呼ばれている面々が、草刈りをしたり、ペンキを塗ったり、トールペイントで絵を描いたり。

ダイナミックなイメージで花を植えたり、活動を動画にしてユーチューブにあげたり。

さらに、ログハウス造りのプロの学ちゃんが、「移動式カフェスタンド」なるものを作って原っぱに置こうとしているらしいし、移動ラーメン屋さんも、イベントのときは呼んでね、と言うし…。

みんなの「原っぱ」として、地域ぐるみで遊べる場所になったらいいな、と思う。

でも、コロナが問題。野外と言っても人が集まることは避けましょう、という時代。みんなでやろうとしていた人形劇も今年は断念。

練習を開始はしたものの、来年できるのかなあ、と心許(こころもと)ない。

そんな中、コロナがおとなしくしているこの隙を狙って、今のうちに原っぱ「売店」のお披露目ぐらいは「やっちゃおう」ということになった。

売店担当の彼女が、ついにのぼりを発注し、クリスマス前にプレ開店を企画した。

そこでみんなの手作り作品を販売するのだけれど、せっかくだから、クリスマスツリー用のかわいいオーナメントも作ってみようよ、ということに。

というわけで、私は内職プロジェクトなるものを立ち上げた。

とは言ってもメンバーは3人。いずれはみんなで作って、それぞれお小遣いを稼いでもらい、「原っぱ」のコーヒースタンドなどで、おいしいコーヒーを味わってもらおう、と狙っている。

これまで唐突に私はこの地にきちゃったと思っていた。けれど、今になって気がついた。

ここにきて、思いもかけないことをしているようではあるけれど、こういうことは、子供の頃から私が、全部やってみたかったことかも、と。

晩年に人生のステージを変えて生きてみるということは、実はこういうことだったのか、と思う。

(ノンフィクション作家 久田恵)