まだ進むコロナ倒産 「ゼロゼロ融資」が正念場

金融機関の窓口には多くの事業者が相談に訪れている(写真はイメージです)
金融機関の窓口には多くの事業者が相談に訪れている(写真はイメージです)

新型コロナウイルス禍の政府主導の各種支援策により、関西2府4県の令和3年度上期の倒産件数は750件と過去20年で最低水準にとどまっている。しかし、外出自粛要請などの影響で売り上げが減少するなど、新型コロナの影響を受けた倒産は継続的に発生している。関西での新型コロナ倒産は、累計433件(11月8日現在)にのぼる。市区郡別にみていくと、どのような地域、業界がダメージを受けたのかがわかる。

最多はビジネス街の中心地、大阪市中央区(33件)だ。同区の船場地区には繊維問屋が集積しており、コロナ倒産もアパレル・雑貨が10件と最多となった。アパレルは外出自粛の影響を最も受けた業界のひとつだ。また、人材派遣、翻訳サービスなど企業向けサービス関連企業も目立つ。

次に多かったのが、神戸市中央区(27件)。神戸港開港以来、洋風文化の影響を受けてきた地域だけに、三宮、元町には小規模のセレクトショップが立ち並ぶ。こうしたショップも、緊急事態宣言中は軒並み休業を強いられ、倒産に至ったことから、アパレル・雑貨のコロナ倒産は9件にも上る。

3番目は「モノづくりのまち」として知られる大阪府東大阪市(24件)。しかし、製造業は4件にとどまる。新型コロナの影響が他業種に比べて少ないのは、リーマン・ショックという当時100年に1度といわれた危機を乗り切った経験が生きたからだ。

他方、東大阪市は大阪の衛星都市としての顔も持つ住工混在地区である。コロナ倒産も飲食店、クリーニング店、イベント企画運営業者など多岐にわたる。

事業継続の正念場

このように新型コロナ倒産は、人流抑制の影響を受けた大都市中心部の企業で多く見られる。

緊急事態宣言や時短要請が解除され、徐々に経済活動は正常化に向けて動き始める。しかし、今後はいわゆる「ゼロゼロ融資」と呼ばれる、新型コロナに対応した無利子・無担保の制度融資の返済時期が到来、政府の支援策も徐々に終了に向かう。同業者間の競争激化も飲食、旅行などさまざまな業界で進むだろう。収益力が回復しなければ、また、倒産数は増加しかねない。経営者にとって、これからが事業継続にむけての正念場となる。(帝国データバンク大阪支社情報部長、昌木裕司)

まさき・ゆうじ 昭和61年帝国データバンク入社。東京支社情報部情報取材課長、福岡支店情報部長などを歴任し、平成29年から現職。

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