プレビュー

「ディア・エヴァン・ハンセン」ほか3本

映画「ディア・エヴァン・ハンセン」の一場面(© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.)
映画「ディア・エヴァン・ハンセン」の一場面(© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.)

公開中の作品から、文化部映画担当の編集委員がピックアップした「プレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。

「ディア・エヴァン・ハンセン」

米演劇界で最も権威あるトニー賞で6部門を独占したブロードウェー作品が、圧巻のミュージカル映画になった。

孤独な高校生、エヴァン・ハンセンの小さな噓が、SNSで美談として拡散する。ハンセンは時の人になり多くの人から愛されるが、やがて真実が明らかになる。

舞台でもハンセンを演じた主演のベン・プラットが、ともかくうまい。あまりに自然に、セリフを語るように歌い出すので、違和感がない。しかも、その歌はセリフよりも雄弁に心情を伝える。

これは、劇中の音楽が素晴らしいからでもある。美しい音楽は、SNSという大群衆の中の圧倒的な孤独というつらい物語の角を取る効果も発揮する。そしてクライマックスでは、音楽が噓と真実の変化を端的に表現。ミュージカルだからこそもたらされる希望、救いがそこにはある。

万人向きではないのかもしれないが、現代のある側面を象徴し、極めて今日的な映画だといえるだろう。

26日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田などで全国公開。2時間18分。(健)

「ミラベルと魔法だらけの家」

映画「ミラベルと魔法だらけの家」 © 2021 Disney. All Rights Reserved.
映画「ミラベルと魔法だらけの家」 © 2021 Disney. All Rights Reserved.

米ディズニーの記念すべき60作目の長編アニメーション映画は傑作だが、子供たちに理解できるか心配になるほどの異色作でもある。

華やかな歌や魔法が出てくるミュージカル・ファンタジーだが、ヒロインはお姫さまではない。一族で一人だけ魔法の才能に恵まれなかった平凡で地味な少女を主人公に、家長である祖母を頂点とした「家制度」の悲劇と再生を描く。そこには「ディア・エヴァン・ハンセン」同様、疎外感や孤独がある。これは偶然なのか。これが、今の世界に共通する気分、あるいは課題なのか。

26日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田などで全国公開。1時間49分。(健)

「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」

映画「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」 ©2021 Zadig Productions  ©Zadig Productions - FTV
映画「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」 ©2021 Zadig Productions ©Zadig Productions - FTV

ルネサンスの巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチ作とされ、2017年に美術史上最高額の約510億円で落札された「サルバトール・ムンディ(救世主)」。たった13万円で買いたたかれた絵画はなぜ、12年という短い間に巨額の値を付けるに至ったのか。また落札後、一度も公開されていないこの作品は今どこに-。各方面の証言を丁寧に紡ぎながら、欲望うずまく美術界および美術市場の裏側に迫ったドキュメンタリー。

市場の論理や国益などがぶつかり合うスリリングな展開。美術品の価値とは何か、再考させられる。

26日から東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマなどで全国順次公開。1時間40分。(黒)

「スパゲティコード・ラブ」

映画「スパゲティコード・ラブ」 ©『スパゲティコード・ラブ』製作委員会
映画「スパゲティコード・ラブ」 ©『スパゲティコード・ラブ』製作委員会

東京に生きる若者たちが自分の夢や存在意義を求め、さまよい続ける姿をドラマチックに描いた。タイトルにある「スパゲティコード」とは、解読困難なほど複雑に絡み合ったプログラミングコードのこと。

フードデリバリー配達員(倉悠貴)や夢を諦めたシンガー・ソングライター(三浦透子)など13人の若者たちのドラマが複雑に絡み合い、思いもよらないエンディングを迎える。

思い悩み、苦悩する若者たちの姿がリアルに描かれており、青春時代の自分の姿と重ね、共感を覚えた。映像ディレクター、丸山健志の長編監督デビュー作。

26日から東京・新宿シネマカリテ、大阪・シネ・リーブル梅田などで全国公開。1時間36分。(啓)