学校トイレ、コロナ禍で改善加速「5K」解消へ

板橋第十小学校のトイレは天井から床までの大きな窓で明るさを確保。便器は床から離れ、清掃しやすい構造になっている=11月16日午後、東京都板橋区(玉崎栄次撮影)
板橋第十小学校のトイレは天井から床までの大きな窓で明るさを確保。便器は床から離れ、清掃しやすい構造になっている=11月16日午後、東京都板橋区(玉崎栄次撮影)

新型コロナウイルス感染症対策の一環で、学校トイレの環境改善が進んでいる。洋式は和式に比べて飛沫(ひまつ)拡散防止効果などがあるとされ、自治体が整備を加速。手洗い場も蛇口をひねる必要のないセンサーを使った自動水栓化が進む。臭い、汚い、怖い、暗い、壊れている-。ときに「5K」とも揶揄(やゆ)される学校現場の〝鬼門〟が、コロナ禍の追い風を受けて急ピッチで生まれ変わりつつある。

洋式化

昨年9月に新築された東京都板橋区立板橋第十小の校舎には、学年ごとに男女1カ所ずつのトイレがある。例えば、校舎1階の男子トイレ。天井から床まである大きなガラス窓から採り入れた日光が淡い赤色のカラフルな壁を照らし、利用者に安心感を与える。

床はビニール系素材を使った乾式。個室の便器は床から離れた壁掛けの洋式で、清掃しやすい環境になっている。手洗い場もかざせば水が出る自動水栓式だ。

「リラックスできる環境であることが大切。家庭で洋式が主流になり、子供たちは使った経験がない和式では用を足しづらくなった。生理現象を我慢すれば、心身の健康にも影響する」。中川久亨(ひさみち)校長はトイレ環境の重要性を語る。

平成29年に文部科学省が杉並区内の小学校で実施したアンケートでは、改修前のトイレで過半数の児童がトイレに行くのを我慢していることが判明。「汚い」「臭い」「和式」など環境が主な理由で、改修後には9割近くが我慢することが減ったと答えている。

自動水栓

コロナ禍がこうした学校トイレの環境改善の動きを後押しする形となった。埼玉県加須(かぞ)市は今年6月、コロナ対策の一環として、飛沫拡散を抑えられる洋式化の加速を決定。市内の小中23校を対象に各トイレに和便器を1基残しつつ、現状で45・7%の洋式化率を74・9%まで高める。

「コロナ禍もあり、『洋式化は当たり前』という空気が醸成されるようになってきた」。TOTOなど関連企業6社でつくり、調査などを行っている「学校のトイレ研究会」の河村浩事務局長はこう指摘する。

便器にとどまらず、手洗いの際に蛇口を使わずに済む自動水栓への切り替えも目立つ。同会が全国の自治体を対象に行った調査によると、感染症対策として学校トイレを自動水栓化したのは令和元年度に35%だったのに対し、コロナ禍の2年度は53%と急増していた。

地域格差

とはいえ、学校のトイレ環境は都道府県や自治体間で格差が大きいのが実情だ。文科省が昨年9月1日時点で公立小中などを対象にした調査では、洋式化が最も進んでいるのは富山県で79・3%。次いで、東京都の71・1%だ。最下位の島根県は35・3%で全国平均(57%)からも20ポイント以上低い状況となっている。

都内でも、洋式化をほぼ完了している荒川区(99・4%)や調布市(97・1%)に対し、小金井市(38・4%)や八丈町(39・9%)では進んでいない。

もっとも一方的な洋式化には異論も。文科省によると、駅や高速道路など公共施設のトイレに和式が一定程度残っている現状で、使い方を学ばせる教育上の観点から学校には和式を残す必要性を指摘する声も学校現場にあるという。便座に直接触れる洋式を望まない子供もいることにも配慮が求められる。

さらに性的マイノリティーや体に障害がある子供たちの利便性も重要な観点だ。学校のトイレ研究会の河村氏は「答えは一つではない。車いすで利用できるトイレを全員が使えるようにするなど、学校ごとにさまざまな取り組みがある」と述べ、学校や自治体での議論を促している。