主張

コシヒカリ発言 知事が「分断」をあおった

定例記者会見で「申し訳ありませんでした」と約20秒間、頭を下げた川勝平太静岡県知事=12日、県庁(田中万紀撮影)
定例記者会見で「申し訳ありませんでした」と約20秒間、頭を下げた川勝平太静岡県知事=12日、県庁(田中万紀撮影)

川勝平太静岡県知事が同県御殿場市を「コシヒカリしかない」などと揶揄(やゆ)した問題をめぐり、県議会が知事の辞職勧告決議案を賛成多数で可決した。御殿場市民が提出した知事辞職を求める請願も可決した。

自民、公明両党が提出した決議案は「県を分断する発言により県民の心を深く傷つけ、県政の停滞と混乱を招いた。知事としての資質を欠いている」とした。

法的拘束力はなく、川勝氏は辞職しない意向だ。

地方自治体は、首長と議会の議員をそれぞれ住民が投票で選ぶ二元代表制をとる。県議会がノーを突き付けた意味は重い。川勝氏には心からの反省が必要だ。

川勝氏は10月23日、参院静岡選挙区補欠選挙の候補者を応援する演説の中で、御殿場市について「コシヒカリしかない。飯だけ食って、それで農業だと思っている」と述べた。

川勝氏が応援していた候補の対立候補が前御殿場市長だったからといって、その市を揶揄する発言をしていいわけがない。

同じ演説で川勝氏は、御殿場市は「人口8万強しかない」と述べる一方、自身が支援する候補者の出身地である浜松市について「80万都市で遠州の中心だ。どちらを選びますか」とも語っていた。

明らかな地域差別で、県の分断をあおっている。県全域の政治を担う知事としての資質を疑われる言動というほかない。

川勝氏は決議について「極めて深刻に受け止め、猛省しなければならない。生まれ変わると富士山に誓った」と述べ、自身の12月分の給料と期末手当を返上する考えを示した。

ただし、川勝氏は当初、「コシヒカリ」発言の非を認めず、撤回して御殿場市などへ謝罪したのは演説から2週間以上たった今月10日になってからだった。

川勝氏は令和元年12月に、県議会を念頭に「やくざ集団、ごろつきがいる」と語った。昨年10月には、日本学術会議会員の任命問題をめぐって「(菅義偉首相の)教養レベルが露見した」と述べた。いずれも撤回、謝罪した。

反省がその場限りであるのは明らかだ。川勝氏は今年6月に4期目の当選を決めた。県内の市を揶揄する姿勢に多選の驕(おご)りはなかったか。自らの言葉通り猛省した上で、進退を判断したらどうか。