北九州でクリーン水素の実証実験

北九州市若松区の響灘地区で稼働を始めたクリーン水素の実証事業プラント
北九州市若松区の響灘地区で稼働を始めたクリーン水素の実証事業プラント

再生可能エネルギー由来の電力を利用して水素を生産する実証事業が25日、北九州市若松区の響灘地区で始まった。二酸化炭素などの排出がない「クリーン水素」として、同市内や福岡県内などで使われる。事業では、需給バランスを維持する上で余剰となる電力を活用し、水素関連技術の蓄積だけでなく、既存発電所と再エネの共存につながることも期待されている。

事業では響灘地区にある太陽光や風力に加え、市内のごみ焼却施設の廃熱を利用した発電所からの電力で水を電気分解し、水素を生産する。北九州市などが出資して電力の小売りなどを手掛ける北九州パワーや重工大手のIHI、高圧ガス製造販売の福岡酸素、石油元売り大手のENEOS(エネオス)の4社が環境省から委託を受けた。同市や福岡県なども支援する。事業費は約4億円で、期間は令和4年度末までとしている。

プラント自体は小規模で、1年間フル稼働しても燃料電池車100台分の水素しか生産できない。しかし類似の再エネ由来の水素生産プラントと異なり、今回の事業で使用する発電所は一部を除き既存の送電網とつながっている。このため九州一円の需給バランス維持と歩調をあわせた形での実証が可能となっているのが特徴だ。

再エネ大量導入に伴い需給バランス維持は年々難しくなっている。再エネに限らず多くの発電所はその時々の電力需要に応じて、フル稼働状態から発電を抑える出力制御が必要となり、九州ではその回数が増加傾向にある。

今回の事業では、出力制御で稼働を抑制するのではなく、余剰分の電力を水素生産のための水の電気分解に回す。IHIでは蓄電池なども組み合わせ、再エネの出力変動に対応した制御方法の開発を急ぐ。気象条件で発電量が変動する再エネの調整弁として、出力制御だけでなく、水素生産というオプションを加える試みだ。実用化されれば、需給バランスに悪影響を与えない形で再エネの導入拡大が進められる。

加えて、生産した水素は北九州市内に敷設したパイプラインで活用するほか、県内複数の水素ステーションで供給することで、生産から消費までのサプライチェーンの確立も目指す。

この日は現地で開所式があり、福岡県の服部誠太郎知事は「それぞれの分野で新たなプレーヤーが参入することに期待する」と述べた。北九州市の北橋健治市長も「環境と経済の好循環というモデルを、世界に向けて示したい」と意欲を示した。(中村雅和)