京人

魔鏡を制作する世界唯一の鏡師 山本晃久さん(45)

鏡師で山本合金製作所の5代目、山本晃久さん=京都市下京区
鏡師で山本合金製作所の5代目、山本晃久さん=京都市下京区

平安時代から伝わる技法で銅鏡(どうきょう)を作る「山本合金製作所」(京都市下京区)の5代目。寺社に納める銅鏡(神鏡)だけでなく、表面に光を当てた際の反射光で背面の模様が映し出される「魔鏡(まきょう)」を制作する世界で唯一の工房だ。

 反射した光を投影させると、キリストの姿が浮かび上がるキリシタン魔境
反射した光を投影させると、キリストの姿が浮かび上がるキリシタン魔境

9月下旬、平成23年の東日本大震災による津波で社殿が全壊した今泉天満宮(岩手県陸前高田市)で再建後初の例祭が営まれ、魔鏡が奉納された。直径33センチの魔鏡に浮かび上がったのは、津波で枯死した樹齢800年もの神木の大杉。「被災地に何かできないかと模索し、節目の年にかかわることができたのは意味がある」と感慨深い様子で話す。

明治以降に普及したガラス鏡とは全く異なる銅鏡は、鋳造(ちゅうぞう)▽削り▽研ぎ-の3工程にわかれ、全工程の習熟には30年かかる。最も難しく時間がかかるのが鋳造。鏡の形に砂を固めてへらで模様を付けて焼くことでできあがる鋳型に、銅やスズなどの合金を流し込んで固める工程だ。

「鏡の制作は、例え鋳造で失敗してもそれも含めてコントロールできないからこそ楽しい。すべての工程が好きですね」と魅力を語る。

固まった合金は、削った後に砥石(といし)と炭で研いで仕上げるが、魔鏡は極限まで削って薄くすることで、背面の模様が乱反射し、投影される仕組み。中でも、江戸幕府の禁教令下で、隠れキリシタンが使っていた「キリシタン魔鏡」は二重構造になっている。投影されて浮かび上がるキリストや聖母マリアの姿を隠すために、背面に花鳥風月などの文様のふたをする細工を施している。

「見られたら危険な状況下であっても、技術を求められたからこそ応えて作ったのだろう」。当時の鏡師(かがみし)に思いをはせつつ、「それは現代も同じで、必要とする人がいる限り、この技術を継承して残していきたい」。古くから神事や信仰を支えてきた技術へかける思いは、人一倍強い。(田中幸美)

■やまもと・あきひさ

昭和50年、京都市出身。慶応2(1866)年創業の「山本合金製作所」の5代目。龍谷大卒業後に本格的に家業に従事する。3代目の祖父に師事し、銅鏡や社寺の神鏡の制作・修復を手掛ける。4代目の父と制作した「キリシタン魔鏡」は平成26年、安倍晋三元首相がバチカンでローマ法王フランシスコに面会した際に寄贈された。