学校の危機管理マニュアル 生徒の凶器想定せず

男子生徒が校内で同級生の男子に刃物で刺される事件があった愛知県弥富市の市立中学校=24日午前10時46分
男子生徒が校内で同級生の男子に刃物で刺される事件があった愛知県弥富市の市立中学校=24日午前10時46分

愛知県弥富市の市立中学校で3年生の男子生徒(14)が同級生の男子生徒(14)に刃物で刺されて死亡した事件では、凶器となった包丁が校内に持ち込まれたことが分かっている。学校現場には、防犯対策などをまとめた危機管理マニュアルの策定が義務付けられているが、今回のような子供による危険物の持ち込みまでは想定されておらず、再発防止の課題が浮き彫りとなった。

危機管理マニュアルは、平成13年の大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件を契機として、多くの学校で作成されるようになった。30年度時点で全国の小中高校などの97%が作成済みで、防犯カメラの設置や登下校時を除く校門の施錠といった対策の定着とともに安全性は向上している。

しかし、マニュアルは原則として校外からの不審者の侵入を前提としているため、文部科学省が学校現場に示している「マニュアル作成の手引」には、生徒による危険物の持ち込みなどは想定されていない。文科省の担当者は「持ち物検査については、教育や人権を踏まえた議論もあり、明確な縛りをかけてこなかった実態がある」と説明する。

文科省によると、全国の中学校で昨年度発生した生徒間暴力は1万4459件。前年度より約5千件減ってはいるものの、依然として多くのトラブルに見舞われているのが実情だ。

刃物が使われる事件も相次いでおり、昨年2月には、埼玉県入間市の高校で3年の女子生徒が同級生を刃物で刺し、重傷を負わせた事件が発生している。

金属探知機の設置などによる防犯体制の強化を求める声もあるが、千葉大教育学部教授で同学部付属中の校長も務める藤川大祐氏は「硫酸など非金属の凶器には対応できず、警戒網をかいくぐろうとする動きも出てくるだろう。登下校中に校外でのトラブルも考えられ、ハード面の対策には限界がある」と指摘する。

暴力行為やいじめ、不登校などの背景には、子供の高ストレスがある場合が多く、同学部付属中では今年度から生徒らの精神状態を把握できる「ストレスチェック」を導入。藤川氏は「予兆を見逃さず、そうした生徒の情報を教員間で共有することが重要。悩みや困りごとを抱える子供に寄り添う教育相談の充実に取り組むしかない」と話した。