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(213)高血圧の治療は糖尿病の予防にも

わが国ではおよそ3人に1人が高血圧だと推計されています。高血圧は放置すると脳出血だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞のもとにもなります。50~60年前までは降圧薬での治療を受ける人は少なく、脳出血を起こす人も少なくありませんでした。しかし、高血圧は治療すべき病気であるという認識が広まり、さまざまな降圧薬も開発されています。それでも現在高血圧患者で治療を受けている人は半分程度にとどまります。

血圧が高いので診てほしいと50代後半の男性が受診しました。何年も前から高血圧に気づいていましたが、薬を飲むことになるのが嫌で受診はしていませんでした。しかし最近は頭重(ずじゅう)感やふらつきといった症状があり、体調も悪いことから、さすがに心配になり受診したそうです。血圧は確かに180/100mmHg程度と高く、血液検査で糖尿病の予備軍であることもわかりました。

高血圧と糖尿病は無関係ではありません。そして高血圧を治療することは、糖尿病を予防することにもつながるということが最近の研究でも示されています。これは今まで行われた高血圧治療と糖尿病発症の関係を調べた20本余りの研究を解析したもので、14万人程度を対象として、平均4・5年観察しています。結果は収縮期血圧(最高血圧)を5mmHg低下させるごとに、糖尿病の発症を11%抑えるというものでした。薬剤の種類別にみると、ACE阻害薬とARBというものが特に優れています。逆にβ遮断薬や利尿薬は糖尿病を増やすことが示されています。よく使われているカルシウム拮抗(きっこう)薬はほとんど影響を及ぼしていませんでした。

降圧薬を選ぶにはいろいろな観点がありますが、糖尿病の予備軍であればACE阻害薬やARBをまずは考えるべきといえます。これらは糖尿病患者での腎障害も防ぐ作用があることがわかっています。ただ実際には1種類の降圧薬だけでは十分に血圧が下がらないため、2、3種類を併用することが一般的です。患者さんが降圧薬の種類にまで注意を向けることは難しいと思いますが、まず大事なのは血圧が高いことを放置しないことです。治療中の人も未治療の人も自宅で血圧を測り、記録を医師に見せると良いでしょう。

男性は受診を決めた時点で降圧薬を服用する覚悟はできていたようで、内服を嫌がることもなく、治療を続けています。

(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)=次回は12月9日掲載予定