主張

備蓄石油の放出 産油国との協調も必要だ

世界的な原油価格の高騰に対応し、日米中などの主要な消費国が備蓄石油の協調放出を決めた。国際的な連携で市場に石油を供給し、石油価格の引き下げを目指す。

過去にも協調放出の事例はあったが、供給途絶などに対する懸念の払拭が主要な目的だった。今回のように価格の引き下げを狙う放出は初めてである。

しかし、備蓄石油には限りがあり、その効果は限定的との見方が根強い。すでに一定量の放出を市場は織り込んでおり、直近の原油相場は値下がり傾向にあった。

さらなる価格の引き下げ効果は期待できそうにない。それだけに産油国に対して増産を働きかけることが重要である。

わが国はサウジアラビアなど産油国と緊密な外交関係を構築してきた。産油国への増産要請は政府が積極的に動くべきだ。

コロナ禍から経済活動が再開されてきたのを受けて世界的に原油需要は高まっており、原油価格は高騰している。10月下旬には国際指標の米国産WTIが1バレル=80ドル台と、約7年ぶりの高値水準を記録した。

原油高騰は景気回復機運に水を差すだけでなく、インフレにつながりかねない。このため、バイデン米大統領が国際協調による備蓄石油の放出を日本や中国、韓国、インド、英国に要請し、各国が準備を始めた。

岸田文雄首相は「原油価格の安定は、新型コロナからの経済回復を実現するうえで重要だ」と放出の意義を強調した。

日本の原油備蓄は海外有事や災害時などの供給途絶に備えた制度だ。放出による価格の引き下げは想定しておらず、国家備蓄の余剰分を活用するという。機動的な対応を可能にするため、幅広い事態に備えておく必要がある。

原油相場の高騰を抑え、価格を安定化するには産油国の増産が不可欠である。

しかし、石油輸出国機構(OPEC)とロシアは消費国の協調放出に反発する恐れもある。産油国と消費国が連携し、相場の安定へ協力関係を構築したい。

欧米主導の脱炭素の流れを受けて世界の原油・天然ガス開発は停滞しており、これが資源価格上昇の大きな要因になっている。

原油価格の安定化に向け、脱炭素の取り組みでも、資源国との協調が必要である。