美村里江のミゴコロ

最愛の狼セーター

秋が深まり冬服を出すと、毎年一着のセーターを思い出す。大変美しく、悲運なセーターであった。

発見したのは欧州の男性古着を集めた東京・吉祥寺のお店。私は幼少期から男子のお下がりを好んで着ており、身長と体形も手伝って男性古着は狙い目だった。

そこで出会ったのだ。

複雑に多色ミックスされたブルーグレー。むっちりと密度があり暖かそうな毛足には毛玉の気配もない。やや細めの身幅に長めの袖丈、広すぎない上品なVネック…。完璧!

喜び勇んで試着をお願いして袖を通すと、予想通り。いや、予想をはるかに超えてよい。しかし予算もはるかに超え、税抜き2万7000円。21歳にはかなり高い買い物だ。うむむ。

そこで品の良い店主から「30年物でこのコンディション、あと20年はお召しになれますよ」と一押しされ、幾度も洗われているので縮むこともないという追加情報で購入を決めた。

晴れて私の一張羅になったセーター。友人だけでなくスタイリストさんやカメラさんなどビジュアルのプロにも褒められ、抜群に暖かく毛玉の心配もなく、本当に一切縮まなかった。