ICTで変わる子どもの学習環境 GIGAスクール時代にプリント教材の果たす役割

教育へのICT(情報通信技術)活用が進み、子どもの学習環境が変化している。学びの機会を広げるオンライン授業や教材のデジタル化が定着する一方、自宅での反復演習などに有効なプリントへのニーズが顕在化。ペーパーレスが叫ばれる時代に、家庭用プリンター市場を底上げしている。学校のICT環境を整備する「GIGA(ギガ)スクール構想」が本格的に動き出すなか、いかにデジタルとリアルの教材を組み合わせ、主体的・対話的な深い学びを実現するか。現場を知る専門家やメーカーを取材した。

デジタル教材もプリント

計算問題や漢字の書き取り、日本史の事件を問う穴埋め━━千葉市の公立小に通う6年生の女児は帰宅後、自分の問題集を家庭用プリンターでコピーするのが勉強時間に入る“儀式”だ。中学受験を控え、授業の復習のほか、学習アプリや塾のデジタル教材を印刷。授業でタブレット端末も利用するが、「紙に書き込み、反復すると(解法を)覚えられるから」とはにかんだ。

以前から勉強は手書きが基本で、都内で働く40代の母親が通勤途中のコンビニで翌日分の範囲をコピーし、机に置いておくのが日課だった。しかし、新型コロナウイルスによる休校期間に入った昨年3月以降、在宅学習の割合が大幅に増え、オンラインで手に入るデジタル教材の利用も始めた。コピーやプリントの枚数は以前の2~3倍に膨らみ、1日平均15枚以上に。1枚10円のコンビニで、月5000円程度の負担になった。

母親はテレワークが中心になるなか、「(女児から)次の問題をコピーしてと頼まれると仕事が中断するし、コンビニまで行く手間もかかる」と頭を悩ませ、家庭用プリンターの購入を決意。1枚のコストの安さを基準に選んだのが、大容量インクタンク搭載のインクジェット複合機、キヤノン「G3360」だ。A4普通紙の場合、モノクロ1枚0.4円で、インクボトル1本につき最大6000枚を出力できる。1日15枚刷ってもコストは月180円程度にとどまり、1年以上はインク交換の手間がかからない。

母親は「出費が抑えられたうえ、手軽に使えるので、娘自ら苦手な問題をコピーするようになった。主体性がでてきたかな」と頰を緩ませる。購入当初は翌日分を用意していたが、次第に女児が自分で弱点克服に役立つファイルまで作成。反復して取り組み、難関中学入試レベルの計算問題10問の解答時間は最初の約30分から、3分以内まで短縮したという。母親は「デジタル教材も、プリントすると書き込みや反復がしやすくなる。紙の教材の良さは残ると思う」と語った。

女児は自ら間違いの多かった問題集のページをファイリングし、翌日もコピーして反復演習に役立てている。
女児は自ら間違いの多かった問題集のページをファイリングし、翌日もコピーして反復演習に役立てている。

AIで置き換えられない能力を養う

政府が2019年12月に策定したGIGAスクール構想は、児童生徒1人1台端末や通信ネットワークの整備を明記。新学習指導要領が掲げる「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」を踏まえ、双方向の授業や一人ひとりに最適な学習環境の実現を目指している。

情報通信総合研究所の平井聡一郎・特別研究員は、「これからはAIやロボットで置き換えることが難しい能力が求められる。クリエイティビティー(創造力)やコミュニケーション能力を養う学びを後押しするのがICT」と背景を説明する。

情報通信総合研究所の平井聡一郎・特別研究員
情報通信総合研究所の平井聡一郎・特別研究員

文部科学省のICT活用教育アドバイザーも務める平井氏は、小・中学校の教師として20年以上勤務し、12年から校長を務めた古河第五小(茨城県)時代に、公立小として全国に先駆けて児童にタブレット端末を配布。教師の一方通行になりがちな授業から、端末を利用して児童が考えを書き込み、発信するアウトプット重視の形式への転換に成功した。「言葉や形にして表現することで理解が深まる。子どもが話し合う授業をつくりたかった」

現在は、学校や教育委員会でICT導入を推進した経験を生かし、全国各地の教育改革に携わる。プログラミングや動画制作など新たな学びを推奨する一方で、リアルなアウトプットの重要性も指摘する。かつて米国のICT先進校を視察し、生徒がパソコンで制作した画像や加工写真をプリントして展示する風景を目の当たりにしたためだ。「素材やサイズ、見せ方を考える力も含め創造力が高まる。個別に鑑賞するデジタルとは違う、大勢で一緒に楽しむ良さも学んでいた」と振り返る。

GIGAスクール構想では、24年度から小学校にデジタル教科書を本格導入する方針。テストはパソコンなどで解答する「CBT」方式への切り替えが進む見通しで、在宅学習もペーパーレス化が予想される。平井氏は「手書きのプリントは、電子ペンと端末画面に代わる可能性があるが、創造力やコミュニケーション能力を養ううえで紙やプリンターの役割は変わらないのではないか」と話した。

仕事/学習モードを設定

教育へのICT活用の影響は、家庭用プリンターの販売動向にも表れている。キヤノンの21年1~9月期決算で、インクジェットとレーザーを合わせた売上高は前年同期比7・4%増と堅調な伸びを記録。新型コロナ下のテレワーク特需に沸いた前年よりも販売台数は下落したが、「インクジェットは好調な在宅需要が続いた」(同社)。購買層の関心が入門モデルから、単価の高い中・高級機種に移っているとみられる。

キヤノンマーケティングジャパンで商品企画を担当する今村駿氏は、「在宅学習やテレワークで家族全員が日常的にプリンターを利用する機会が増え、より操作が便利で高機能な製品へのニーズが拡大した」と説明する。これに応え、10月に発売した「PIXUS XK100」は、操作画面に「仕事/学習モード」を新たに設定。標準モードからワンタッチで切り替え、コピーや方眼紙やレポート用紙といった定型フォーム印刷など頻繁に使うメニューを素早く選べるようにした。印刷の美しさはもちろん、スマートフォンとの連携や操作ボタンを押すだけのワンプッシュコピー、自動両面コピーなどのコピー機能も充実した高機能機種だが、カートリッジ交換式モデルでありながら、A4普通紙モノクロ1枚1.5円とコストの安さを両立している。

10月に発売した「PIXUS XK100」の特長を語るキヤノンマーケティングジャパンの今村駿氏。
10月に発売した「PIXUS XK100」の特長を語るキヤノンマーケティングジャパンの今村駿氏。

教育にプリンターを使うのは中学受験対策など一部の利用者に限られていたが、新型コロナでオンライン授業やデジタル教材が普及し、一般的な児童・生徒や大学生に広がったようだ。このためPIXUSシリーズは昨年7月に、課題などを教師・生徒間で共有するウェブサービス「Google Classroom」にも対応し、より幅広い層が活用する土壌を整えている。

今村氏は「新型コロナ禍を経てプリントを必要とする人が多いことが分かった。GIGAスクール構想でデジタル化が進んでも、学習や仕事などに役立つプリント機能を引き続き提案していきたい」と語った。

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提供:キヤノンマーケティングジャパン株式会社