主張

子宮頸癌ワクチン 過去反省し着実な実施を

子宮頸癌(けいがん)の原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンの積極的勧奨の再開が決まった。

厚生労働省の専門部会が有効性を確認し、安全性に特段の懸念は認められないと判断した。

約8年間にわたり中断され、接種率が極めて低い状態が続いていた。諸外国では既に接種が浸透し、実際に子宮頸癌の発症が減ったとの実績も報告されている。

積極的勧奨の差し控えで数百万人規模の女性が接種機会を逃した事実は大きい。差し控えの期間がなぜこれほど長引いたのか。厚労省は責任の重さを認識すると同時に、自治体とともにワクチン接種を着実に実施してほしい。

接種する機会を逃した世代には改めて、幅広く機会を提供すべきは当然だ。

子宮頸癌は、日本国内では毎年、子育て世代を中心に約1万人の女性がかかり、約3千人が亡くなる疾患だ。米、英、独、仏など先進各国がワクチン接種を公的に行い、世界保健機関(WHO)が接種を推奨している。

だが、日本では接種後に手足が動かしにくくなったり、広範囲に痛みが出たりする多様な症状が報告され、産経新聞も含めメディアは、苦しむ少女たちの姿を繰り返し報道した。一部の冷静さを欠いた報道ぶりは深く反省したい。

厚労省が及び腰になった背景には、国や製薬会社を相手に損害賠償を求める集団訴訟が起きたこともある。厚労省の消極的なワクチン行政は、新型コロナウイルスのワクチンに対する姿勢全般にも通じる。接種していれば助かった命もあったはずだ。少なくともワクチン接種と多様な症状との間に明確な因果関係が認められないと分かった平成30年ごろには勧奨再開に向けて対応すべきだった。

ワクチンへの信頼を得るにはきめ細かい対応が必要だ。副反応を訴える人には、各都道府県で1カ所以上の協力医療機関が整備されている。地域の医療機関と連携し治療と支援に当たってほしい。

未接種の女性にも多様な症状が認められる以上、若い世代の女性に共通の健康課題として、症例を広く集めることが治療法の確立にも寄与するはずである。

科学的な根拠を当人や保護者に分かりやすく伝え、根拠のない情報に惑わされない態勢をつくることは何よりも大切だ。