チーム学校

スクールロイヤー 法律で問題解決助けるアドバイザー

いじめ、虐待、不登校、校則違反-。学校現場は日々、さまざまな問題に直面している。教職員だけで解決するのが難しい場合は、「スクールロイヤー」と呼ばれる弁護士が相談に乗り、法的な視点から、事態の収拾に向けて具体的な対処法をアドバイスする。問題が深刻化するのを防ぐとともに、疲弊する学校現場の負担を軽減する。そのニーズは年々、高まっている。

「気になる生徒がいるんですが、ちょっといいですか」。2学期のある日の午後、東京都内の私立中高一貫校。非常勤の社会科教師でスクールロイヤーでもある神内聡(じんない・あきら)さん(43)に、男性教諭が声をかけた。神内さんが応じると、教諭は最近の生徒の様子や人間関係について説明し始めた。

弁護士資格を持ち、同校だけでなく複数の学校でスクールロイヤーを務める神内さんが期待されているのは、法律の専門家としてのアドバイスだ。例えばいじめであれば、学校や自治体の取り組みを示した「いじめ防止対策推進法」に基づく対応が前提。厳密に法を適用するだけでなく、個々のケースに応じた再発防止策も提示する。家庭で虐待を受けている可能性があれば、児童相談所の弁護士と連携し、家庭環境を整えるための法的な手続きをアドバイスする。

「子供だけでなく、先生にも『楽になった』『相談してよかった』と思ってもらえたとき、やりがいを感じる」。神内さんはそう話す。

複雑ないじめやトラブル

生徒と話をするスクールロイヤーの神内聡さん(中央)。授業や部活動も担当し、学校現場を熟知していることが強みだ=東京都内の私立中高一貫校(松井英幸撮影)
生徒と話をするスクールロイヤーの神内聡さん(中央)。授業や部活動も担当し、学校現場を熟知していることが強みだ=東京都内の私立中高一貫校(松井英幸撮影)

本来ならいじめは、ないことが理想だろう。だが、「教師が生徒の人間関係を把握しようと努力しても、いじめを完全に防ぐのはきわめて難しい」と神内さん。だからこそスクールロイヤーには、起きてしまったいじめを適切に解決する手腕が求められるという。

そう思うようになった背景には、自身の苦い経験がある。以前は学級担任をしていた神内さんは、放課後などに積極的に生徒と雑談し、いつでも相談しやすい態勢を心がけていた。だが卒業後に生徒たちと会った際、「今だから話せるんですが」と、いじめに該当するような事実を告白された。気を配っていたつもりが、在学中はまったく気付けなかった。

神内さんによると、子供同士のトラブルは、誰が先に手を出したのか分からなかったり、複数の加害者の間に主従関係があったりと一筋縄ではいかないケースも多い。ときには被害者が「この加害者だけは許せない」と訴える場合もある。判断に迷って事態が長引けば、傷が深まることもある。そんなときこそ、スクールロイヤーの出番だ。

学校現場でのニーズは高まっている。文部科学省の平成31年3月の調査では、市町村教育委員会の76%が「法的な専門知識を有する者が必要」と回答した。

国は令和2年度から、都道府県と政令市の教育委員会が弁護士に相談する際の経費に普通交付税を活用できるようにし、弁護士の意見を聞くための金銭的なハードルを下げている。

弁護士相談 9割超メリット

国の動きに先立ち、独自にスクールロイヤーの制度を導入した自治体もある。平成25年度から取り組む大阪府は現在、11人の弁護士をスクールロイヤーに委嘱している。

学校は市町村教委を通じて相談を依頼。スクールロイヤーは法律事務所などで学校関係者と面談し、問題解決について助言する。年に数回、エリアごとの相談会も開かれている。

「子供の持ち物を壊した加害者を特定できない」「子供とトラブルになった相手の親の連絡先を教えるよう保護者に要求された」…。府教育庁小中学校課によると、令和2年度に小中学校から寄せられた相談は129件に上った。