我流~社会部発

関電元役員、雲隠れは許されぬ

金品受領・報酬補填問題の調査結果を公表する関西電力第三者委員会の但木敬一委員長(中央)ら=令和2年3月14日、大阪市(須谷友郁撮影)
金品受領・報酬補填問題の調査結果を公表する関西電力第三者委員会の但木敬一委員長(中央)ら=令和2年3月14日、大阪市(須谷友郁撮影)

関西電力を揺るがした元役員らの金品受領・役員報酬補填(ほてん)問題は、会社法違反(特別背任、収賄)などの罪で刑事告発された元役員9人全員が不起訴(嫌疑不十分)となった。1年余りに及んだ大阪地検特捜部による捜査の内幕を探ると、「極めてグレーな状態」(検察幹部)として、起訴と不起訴の間を何度も行き来した末のぎりぎりの判断だった。

関電の幹部75人が原発工事業者と関係の深い福井県高浜町の元助役から総額3億6千万円相当の金品を受け取り、さらに東日本大震災(平成23年3月)後の赤字で削減された18人分の役員報酬を退任後の嘱託報酬を装って〝極秘裏〟に埋め合わせた-。これが刑事告発された疑惑の構図だ。

原発に絡む不透明な癒着が浮かんだ金品受領問題では、もともと立証のハードルが高かった。金品を贈ったとされる元助役が問題発覚半年前の31年3月に死亡していたからだ。最大のキーマンの不在によって、起訴に向けた重要ポイントだった元役員側への「不正の依頼」を立証することが困難となり、早々に不起訴判断へと傾いた。

一方、役員報酬補填問題に関しては別立てで捜査が進み、特捜部は最後まで立件の可能性を模索した。

関電は東日本大震災後、福井県内の3原発を停止し4期連続で最終赤字を計上。経営基盤の安定を目的に関電は関西一円の家庭や商店に対し、25年5月から平均9・75%、27年6月からは同8・36%と、2度にわたる電気料金値上げに踏み切った。役員報酬の補填は、電気料金の追加負担を課せられた国民はおろか、株主や身内の取締役会にすら報告されることなく実行され、総額は約2億6千万円に上った。

減額前の常勤取締役の平均報酬額は1人当たり3700万円余り。赤字計上で同1400万円余りにまで減らしたとはいえ、年間550万円という1世帯当たりの平均年収と比べると、減額後の報酬額は決して低水準ではない。特捜部の調べに対し、補填を「業務の正当な対価だ」とした元役員側の主張は国民の意識と乖離(かいり)していた。顧客である電気利用者への背信行為ともいえるのではないか。

特捜部も悪質な補填とみて熟慮を重ねた。だが、元役員への嘱託業務の実態があったことなどから、法廷で報酬の違法性を立証するのは難しいと結論付けた。

告発した市民団体側は不起訴を不服として、検察審査会に審査を申し立てる方針を示している。検審の議決次第では起訴の可能性が依然残るため、元役員は今後の捜査や並行する民事裁判への影響などを理由に沈黙を守り続けている。

電気料金を経営の柱とする関電は公益性が極めて高い企業だ。疑いをかけられた元役員は電気利用者や社会に対し、自らの言葉で説明責任を果たす必要があるのではないか。「雲隠れ」は許されない。(社会部 山本考志)