コロナ その時、

(36)2021年6月1日~ ワクチン確保失敗、高まる不信

東京など10都道府県へ発令されていた緊急事態宣言が6月20日に沖縄を除く9都道府県で解除され、一部が蔓延(まんえん)防止等重点措置に移行した。ワクチンの職場接種は、肝心のワクチン確保でつまずく。政府は接種申請を一時停止し、国民の政権不信へとつながった。海外ではインド由来の変異株「デルタ株」が主流となり始めていた。

3回目緊急事態を解除 デルタ株の猛威、海外で表面化

政府は6月1日、職場や大学での新型コロナウイルスワクチンの接種を21日から始めると発表。菅義偉首相が感染拡大を抑える「切り札」としたワクチン接種を幅広く行う環境がようやく整うことになった。ワクチンの国内開発・生産に関する長期戦略も1日に閣議決定され、菅首相は9日の党首討論でワクチン接種について「10月から11月にかけて、希望する国民全てを終えたい」と意気込みを示した。

東京五輪ソフトボールのオーストラリア代表が1日、事前合宿地の群馬県に入った。五輪延期後、初めての海外チームの来日となったが、丸川珠代五輪相は同日、こうした事前合宿や交流事業について、国内の105の自治体で受け入れが中止となったことを明らかにした。

新型コロナウイルスの影響を考慮し、海外選手団側が東京都内の選手村に直接入る判断をしたケースが多く、自治体側からは残念がる声も聞かれた。

令和4年の新卒者などの採用で、企業の面接や筆記試験の選考が1日に解禁された。だが、学生はコロナ禍で1年以上も大学に行く機会が少ないまま。対面よりも、会員制交流サイト(SNS)などに就職活動情報を頼りがちになり、ただでさえ不安な就活に一層焦りを募らせた。

イスラエル、規制に逆戻り

新規感染者数の減少を受けてイタリア、フランスで飲食店の営業再開が進む中、インド由来の変異株「デルタ株」の猛威が世界的に表れ始めた。世界保健機関(WHO)のスワミナサン首席科学者は18日の記者会見で、デルタ株について「感染力が高いため世界的に主流になりつつある」と警鐘を鳴らした。

世界有数の速さでワクチン接種を進めたイスラエルではデルタ株による感染再拡大が起き、同国保健省は25日、撤廃した屋内でのマスク着用義務を再開。ワクチン接種とともに感染者数が減少し、1日に行動規制をほぼ解除するなど「コロナ前」の生活を回復したばかりだったが、再び規制措置へと逆戻りした。

職場接種開始2日で申請中断

8日には、東京都が築地市場跡地(中央区)に設置した大規模接種センターで、東京消防庁や警視庁の職員らへの集団接種がスタート。企業などが社員らに接種する職場接種は航空業界が先陣を切った。全日本空輸は13日から、日本航空は14日から、それぞれ羽田空港で始まり、接種を終えた全日空の機長は「これで安心して国際線に乗務できる」と安堵(あんど)した様子だった。

21日からは、ほかの大企業や大学などでも始まり、都内の職場接種の会場を視察した菅首相は「さらに加速させたい」と語った。ところが、事態はすぐに暗転する。わずか2日後の23日、政府は職場接種の申請を25日をもって一時締め切ると発表した。申請が殺到し、ワクチンの配送・確保ができない恐れが出たためだった。

政府の見通しの甘さを露呈した形で、その後、ワクチン供給のめどがついたと政府が公表したのは2カ月近く後となる8月17日。実際の接種はさらに遅れ、菅政権への不信につながる大きな要因となった。

■五輪の有観客開催を決定

一方、高齢者向けの接種は進み、6月末までに1回目を終えた人は約69%に達した。新規感染者数はゆっくりと減少。東京五輪開幕まで1カ月ほどとなった20日、東京など10都道府県へ発令されていた緊急事態宣言が沖縄を除く9都道府県で解除され、一部が蔓延(まんえん)防止等重点措置に移行した。東京は約2カ月ぶりの宣言解除だ。政府は、大会組織委員会などによる5者協議で、五輪の観客上限を「会場の定員50%以内で最大1万人」とすることを決める。

ワクチン接種で感染拡大を抑え込み、有観客での五輪実施に道筋をつけた―。政府関係者が抱いたこんな期待感はほどなく打ち砕かれ、見通しの甘さを痛感することになる。翌月、感染力の高いデルタ株に置き換わった国内は、その猛威にさらされる。

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