主張

オプジーボ和解 産学連携の抜本的改善を

がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許をめぐり京都大特別教授の本庶佑(ほんじょ・たすく)氏が小野薬品工業に262億円の支払いを求めた訴訟は、大阪地裁で12日に和解が成立した。

和解に基づき、小野薬品は解決金などの名目で本庶氏に50億円を支払うほか、京都大に新設される基金に230億円を寄付する。

企業と大学の連携による基礎研究と若手研究者の支援に主眼を置いた双方の合意を評価する。今回の和解を、日本における産学連携のあり方を抜本的に見直す契機としたい。

ノーベル医学・生理学賞(2018年)に輝いた本庶氏の研究成果をもとに開発されたオプジーボは、多くのがん患者に光明をもたらした。しかし、訴訟の長期化が研究者と企業の関係悪化につながる懸念もあった。小野薬品は「産学連携の新たな形を示すために、和解によって訴訟を終了させることにした」とした。

本庶氏も「企業から還流される資金や善意の寄付により、基礎研究を長期的展望で支援していきたい。企業と大学が協力して若い研究者が人生をかけてチャレンジできる研究環境を用意することは国の成長には不可欠」とのコメントを発表した。

日本の科学技術、研究現場は深刻な危機に直面している。学術論文の国際比較では質、量とも低落し、博士課程に進む学生は減少傾向にある。岸田文雄政権が掲げた「10兆円基金」だけで立て直せる状況ではない。製薬に限らず、あらゆる分野で企業と大学、研究機関が緊密に連携して科学研究を支える必要がある。

一例として、大学と企業の接点である採用・就職の慣行を抜本的に改めることを挙げたい。

博士課程に進むと、民間企業への就職の門戸が著しく狭まるのが日本の現状である。若手研究者の身分や待遇を安定、向上させたとしても、「博士」の肩書が就職において不利(ハンディキャップ)になる社会では、幅広い学生が研究を志すことは難しい。

若い博士たちが、大学や研究機関以外でもハンディを負うことなく活躍できるような受け皿を、産業界全体で築くべきである。日本の科学技術を担う人材育成に貢献することは、企業にとってもプラスになる。長期的かつ喫緊の課題として取り組むべきである。