「あと3人…」自民の川勝静岡県知事不信任案不発

「ごめんなさい」。記者会見で自身の発言を謝罪、撤回した川勝平太静岡県知事=10日午後9時45分ごろ、県庁(岡田浩明撮影)
「ごめんなさい」。記者会見で自身の発言を謝罪、撤回した川勝平太静岡県知事=10日午後9時45分ごろ、県庁(岡田浩明撮影)

「知事不信任案の可決には、あと3人足りません」。23日、静岡市内で開かれた、静岡県議会最大会派、自民改革会議の議員総会。川勝平太知事の御殿場市をめぐる舌禍などの責任を問うとして24日の臨時県議会への提出を目指していた不信任案だが、会派の役員は苦渋の表情でこう報告した。多数派工作の不調を意味し、提出を諦める事実上の〝敗北宣言〟だった。

会議終了後、野崎正蔵代表は記者団に「知事の辞職を求めるという議会の意思を示すための最善の方法を協議した」と述べ、次善の策として辞職勧告決議案を提出することをにおわせたが、その表情は厳しく、言葉少なに会場を後にした。

不信任決議案可決に必要となる出席議員4分の3以上、今回の場合は「51人」のラインは、初めから容易ではなかった。現在の県議全67人のうち、自民40人、公明5人が一致団結した上で、不信任案に肯定的な無所属の3人を合わせても、川勝知事を支える第2会派「ふじのくに県民クラブ」(17人)から3人を引きはがさなければ、可決は見込めない計算だった。

労組、旧民主重鎮側…あの手この手で仕掛けるも

自民は「議員としての良心に訴える」(野崎代表)と、あの手この手でふじのくに議員に仕掛けた。後援会幹部や、川勝知事を支援しつつも度重なる〝失言癖〟に眉をひそめていた労働組合関係者らを通じてアプローチ。さらには、旧民主党幹部で先の衆院選後に自民党入りが決まった細野豪志氏の関係者が、親しいふじのくに県議に造反を働き掛けた-という情報も出回った。反対まではいかずとも、本会議欠席者が出れば「出席者の4分の3以上」の可決ラインは下がる。

〝からめ手〟からの攻勢に、ふじのくに側は対抗策として「議会に遅刻しないよう公共交通機関で移動する」「採決時に互いに反対票を確認する」ことなどを申し合わせた。臨時議会前日には全員で泊まり込んで結束を固めてはどうか-などという冗談のような対策さえ話題に上ったという。

周辺環境も変わりつつあった。当初は「誤解」などと抗弁した川勝知事だったが10日夜、御殿場市役所を訪ねて勝又正美市長、高橋靖銘市議会議長に発言を撤回して謝罪。12日の定例記者会見では約20秒間、頭を下げるなどして県民全体に謝罪し、選挙応援などの「政務」の封印も宣言するなど低姿勢となった。勝又市長は「心からの謝罪があった」と一定の理解を示し、市議会は謝罪要求決議の上程を取りやめていた。

川勝平太知事への不信任議案提出などについて取材に応じた自民改革会議の野崎正蔵代表(中)ら=12日、県庁(田中万紀撮影)
川勝平太知事への不信任議案提出などについて取材に応じた自民改革会議の野崎正蔵代表(中)ら=12日、県庁(田中万紀撮影)

逆に「信任」主張も懸念

結果として知事不信任への「あと3人」の壁は厚く、自民は前日の段階で断念する結果に終わった。ある自民県議は「不信任案が否決されれば、川勝知事は逆に『議会で信任された』と開き直るかもしれない。それならば辞職勧告案を可決し『辞職に値する』と県民に知らしめた方がいい」と話した。会派としても、辞職までは追い込めなくとも、辞職勧告で川勝知事への抑止力になると判断したもようだ。

別の自民県議は、悔し紛れにこう言い放った。「不信任と辞職勧告の違いや、法的拘束力のあるなしは、県民目線では分かりづらい。県民にインパクトを与えるには、議会が辞職を求めていることが可決されたという形を作ることが何よりも大事だ」