【ワシントン=塩原永久】バイデン米政権は23日、高止まりする原油価格への対応策として、日本、英国、中国、インド、韓国の消費国と協調し、石油備蓄を市場に放出すると発表した。新型コロナウイルス禍からの経済回復で原油や石油製品の価格が高騰しており、供給量を増やして価格を引き下げる狙いがある。主要消費国が備蓄放出で協調するのは異例だ。
米国は緊急時のためにためておく戦略石油備蓄(SPR)から5千万バレルを数カ月かけて放出する。ロイター通信によると、インド政府も500万バレルを放出すると発表した。
ホワイトハウスは「米国民が上昇するガソリン価格の痛みを感じている」とする声明を発表した。「原油供給は回復する世界経済の需要に追い付いていない」と指摘している。
原油価格は10月下旬に約7年ぶりとなる1バレル=85ドル台に一時上昇。回復途上の世界経済の足かせとなることが懸念されている。
自動車を日常の移動手段とする米国では、ガソリン価格上昇が政治課題となりやすく、支持率が低迷するバイデン米大統領が対応を急いでいた。
一方、米ブルームバーグ通信は関係者の話として、消費国が備蓄を放出した場合、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの主要産出国側が、価格維持のため生産を抑制する可能性があると報道。米国主導の備蓄放出が、どこまで油価上昇に歯止めをかけられるかは見通せない側面もある。