首相主導「官邸外交」着々 林氏起用・各国にパイプ

岸田文雄首相が「官邸主導」外交に意欲を見せている。先々代の安倍晋三政権は安倍氏や官邸官僚が外交をリードしたのに対し、先代の菅義偉政権は「外務省主導」の色彩が強かった。首相は外相の連続在任期間が戦後最長で、各国に人脈もある。岸田派(宏池会)ナンバー2で信頼を置く林芳正外相を起用するなど、岸田外交の地盤固めに向けた布石を着々と打っている。

「外交は官邸主導でやったらいい」。首相は就任後、外相としてつかえた安倍氏にこう助言された。平成24年に発足した第2次安倍政権は官邸が外交を牽引(けんいん)。安倍氏は米国のトランプ前大統領やロシアのプーチン大統領ら首脳と信頼関係を構築し、「自由で開かれたインド太平洋」構想などを推し進めた。

同時に外交・安全保障の司令塔を担う国家安全保障局(NSS)の局長に、信頼が厚い警察庁出身の北村滋氏を抜擢(ばってき)する異例の人事を断行。対露、対中国外交では首相秘書官を務めた今井尚哉氏ら経済産業省出身の側近が存在感を見せた。

これに対し、菅政権は、ボトムアップ型の「外務省主導」外交に回帰。NSS局長も外務省出身の秋葉剛男氏に代えた。新型コロナウイルスの感染拡大もあり、安倍政権のように官邸が外交で存在感を発揮する場面は少なかった。

首相は連続で戦後最長の4年8カ月にわたって外相を務め、安倍氏同様、海外の首脳らに知己が多い。

今月2日には初外遊で英国を訪れ、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)首脳級会合に出席。同じく外相経験者で、会談を重ねたジョンソン英首相から歓待を受けたほか、各国首脳に囲まれて人だかりができる場面もあった。同盟国の米国に関しても外相在任時は民主党のオバマ政権だったため、バイデン政権で大統領特使(気候変動問題担当)を担うケリー元国務長官をはじめパイプがある。

首相も周囲に「外交は4年8カ月やってきた自負がある。『官邸主導』の外交をやりたい」と語る。自らに近い林氏を外相に起用したのも、外務省を掌握し、官邸と一体で外交を進める意欲の表れだ。

一方で、安倍政権下で今井氏や北村氏が果たした役割を誰が担うのかは不透明だ。首相のリーダーシップで外交を展開するための官邸の体制づくりが今後の課題となる。(永原慎吾)