大阪狭山暴走から1週間 問われる高齢者の運転

スーパーに車が突っ込んだ事故現場。3人が死傷した=17日午後、大阪府大阪狭山市(須谷友郁撮影)
スーパーに車が突っ込んだ事故現場。3人が死傷した=17日午後、大阪府大阪狭山市(須谷友郁撮影)

大阪府大阪狭山市のスーパーの店先で89歳の男が運転する車が暴走し3人が死傷した事故は、24日で発生から1週間。高齢ドライバーの事故は相次いでおり、免許返納の動きが広がる一方、山間部などでは生活に欠かせない「足」を手放すのは容易ではなく、返納を躊躇(ちゅうちょ)する高齢者もいる。専門家は「マイカーの代わりとなる交通サービスの提供が必要」と指摘する。(木下未希、中井芳野)

■操作ミスが最多

17日午後、買い物客でにぎわうスーパー「コノミヤ狭山店」で、事故は起きた。車は自動販売機をなぎ倒しながら敷地内に進入した後、猛スピードで後退。居合わせた警察官が止めようとしたが、再び急発進してスーパーの壁に衝突した。

この間、近くにいた男女3人が巻き込まれ、無職の岡田博行さん(87)が死亡。車を運転していた横山孝運転手(89)は自動車運転処罰法違反容疑で大阪府警に現行犯逮捕され、19日に釈放された。横山運転手は「アクセルとブレーキを踏み間違えた」と説明しているという。

高齢ドライバーの事故は後を絶たず、警察庁のまとめでは、75歳以上の運転者による死亡事故は令和元年で401件。件数は減っているものの、死亡事故全体に占める割合は14・4%と増加傾向にある。原因はハンドル操作の誤りやブレーキとアクセルの踏み間違いなど「操作の誤り」が最多で、30%を占めた。

■免許返納促す

相次ぐ事故を受け、高齢者に免許返納を促す取り組みが広がっている。

各都道府県の公安委員会は免許返納者に身分証として使える運転経歴証明書を交付し、民間業者と連携して公共交通機関の割引サービスなどを提供している。

大阪府警は、今春から免許返納を検討する高齢者に対し、免許返納後の生活を20日間疑似体験する「運転免許証返納体験」を実施。返納時に不安に感じる点についてアドバイスを受けられる。さらに北海道天塩町など、タクシーよりも安い料金で複数の高齢者を目的地まで運ぶ乗合車を運行する自治体もある。

こうした取り組みのほか、平成31年には東京・池袋で当時87歳の男が運転する乗用車が暴走して母子2人を死亡させた事故もあり、免許を返納する75歳以上の高齢者は年々増加。昨年の返納は29万7452件に上った。

■地方では渋る声も

一方で、交通手段の乏しい地方では、移動手段をマイカーに頼らざるを得ず、返納を渋る声も上がる。

群馬県の山間部に住む女性(79)はここ数年で2回の物損事故を起こした。事故を悔やむ日が続き、次の更新時に返納することを決めたが、「自治体のバスは本数が少なく、買い物には不便。友人の中には80歳を過ぎても返納を嫌がる人もいる」。京都府京丹後市の男性(90)も「買い物に出かけたりするのに、毎日30分ぐらい運転している。車がないとコンビニも行けない」と話した。

全国の75歳以上の運転免許保有者は過去10年間で約240万人増え、昨年は約590万人。超高齢化社会を迎え、今後さらに増加が見込まれる。来年5月には、3年以内に一定の違反歴がある75歳以上を対象に「運転技能検査」を義務付ける改正道交法が施行される見通しだ。

関西大の安部誠治教授(交通政策論)は「一般的に高齢者は身体能力や注意力が低下するため、なるべく車を運転しない方がのぞましく、自治体はマイカーがなくても日常生活が送れる交通サービスの提供に尽力する必要がある」と指摘。さらに「国はそうした自治体の取り組みを支援するとともに、メーカーに対し高齢者の事故防止に役立つ自動車の安全技術開発に補助金を出すなどの方策も必要だ」と話している。